研究課題
基盤研究(C)
加齢黄斑変性 (AMD) に対する創薬が研究目的。独自に得た以下の知見が研究基盤である:1)新たなMRTF結合タンパク質が網膜変性疾患の要因となる網膜色素上皮細胞 (RPE) の上皮間葉転換(EMT)惹起に極めて重要であること及びその分子機構を解明した、2)殺虫剤として用いられているbenzoylphenylurea (BPU)に属する化合物がRPEのEMT、筋線維芽細胞の機能発現、血管新生及び in vivoでの網膜下瘢痕組織形成を阻害する。本研究では複数のアプローチ(① MRTF機能阻害化合物の探索と② BPU類縁体をシードとした研究)から創薬研究を行い、根治的AMD治療薬創成を目指す。
①筋線維芽細胞機能発現の分子メカニズムの解明及び②筋線維芽細胞の活性化に起因する網膜変性疾患に焦点を当てた創薬研究が本研究の目的である。①に関して、筋線維芽細胞の機能発現に重要な役割を果たすタンパク質としてCRP2を同定した。CRP2は筋線維芽細胞に特有な転写を促進する。CRP2の3D構造解析によりこの機能に必須の領域及びアミノ酸配列を同定した。②に関して、Benzoylphenyl urea (BPU) 類縁体、BPU17と命名した化合物が網膜変性疾患モデル動物を用いた解析で瘢痕形成及び血管新生を抑制することを明らかにし、その標的タンパク質の同定と阻害機構の解明に成功した。
加齢黄斑変性 (AMD) は血管新生とその破綻に起因する網膜変性疾患で、高齢化の進行により患者の増加が予想される。AMD治療薬として抗VEGF剤が使用されるが、根治的な治癒には至らず病変部で瘢痕が形成され、視覚障害を起こす。本研究でCRP2が筋線維芽細胞の機能発現に重要な役割を果たすことを明らかにし、CRP2が線維化に向けた新たな創薬標的であることを示した。また、元来殺虫剤として開発されたBenzoylphenyl ureaに属する化合物が網膜変性疾患に対する創薬に応用可能なことを明らかにした。以上の結果はAMDをはじめとする網膜変性疾患に対する新たな創薬基盤を提示し、その社会的意義も高い。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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