研究課題/領域番号 |
19K07374
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
北川 元生 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (40262026)
|
研究分担者 |
増田 渉 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00623464)
湯澤 聡 国際医療福祉大学, 医学部, 講師 (40515029)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | Notchシグナル / TM2D3 / TM2D1 / TM2D2 / ノックアウトマウス / アルツハイマー病 / 細胞表面受容体 / 細胞内シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
Notchシグナルは様々な細胞の運命決定に関与し、その変異は各種悪性腫瘍、遺伝性疾患の原因となる。Notchは細胞表面でリガンドと結合することによって活性化されるが、この活性化の分子機構は十分に理解されていない。本研究は、新たにNotchの細胞表面での発現に関与することを見出したTM2D3の組換え型タンパク質を作製し、組換え型Notchタンパク質との複合体の高次構造の解明、特異抗体の作製とこれを用いた解析を計画する。またTm2d3ノックアウトマウスをさらに解析する。 一方、TM2D3の多型がアルツハイマー病の発症リスクを著しく増加させることが報告されている。この機構の解明にも着手する。
|
研究実績の概要 |
TM2D3のN側の細胞外ドメイン全長(102残基)を6 × His融合タンパク質(組換え型TM2D3タンパク質)として大腸菌を用いて発現した。このタンパク質のrefoldingを試みたところ、非還元状態で二量体および三量体を形成することを見いだした。これらの複合体は還元状態にしても部分的にしか崩壊しないことから、安定なものであることが示唆された。 この組換え型TM2D3タンパク質を抗原としてウサギポリクローナル抗体を作製した。この抗体を用いてWestern blottingをおこなったところ、組換え型TM2D3タンパク質二量体および三量体は1 ngのオーダーに至るまで良好に検出されたが、単量体の検出には10倍量のタンパク質を必要とした。野生型マウス由来の初代培養線維芽細胞の溶解液を、Tm2d3ノックアウトマウス由来細胞の溶解液をコントロールとして同様の解析を行ったところ、両者のバンドのパターンに変化が見られなかったことから、この抗体では内因性Tm2d3タンパク質の検出は難しいと考えられた。 NOTCH1とTM2D3の物理的会合を検討するため、NOTCH1を過剰発現させた293T細胞の溶解液と組換え型TM2D3タンパク質をincubateし、上記抗体とprotein G sepharoseを用いてTM2D3を回収したが、NOTCH1のpull downは検出されなかった。 TM2D3と類似した構造を持つタンパク質であるTM2D1とTM2D2について、N側の細胞外ドメイン全長の大腸菌を用いた発現を試み、81残基からなるTM2D1、N端が異なる2つのalternative splicing variantが知られているTM2D2については112残基からなるTM2D2v1と86残基からなるTM2D2v2それぞれを6 × His融合タンパク質として発現することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Tm2d3ノックアウトマウスの表現型の解析については終了しており、今後論文としてまとめる。 TM2D1とTM2D2の機能解析については順調に進展していると考えられる。 Tm2d1とTm2d2のKOマウス系統は、すでにMutant Mouse Resource & Research Centers (MMRRC) に参加している米国大学の共同研究者によって作製されており、表現型の解析はわれわれが行うことになっている。新型コロナウイルス感染症流行の影響によって米国で飼育マウス数および飼育担当者が削減されたため、現在に至るまでこれらのノックアウトマウス系統(凍結精子)の輸送が実現していない。
|
今後の研究の推進方策 |
ショウジョウバエの遺伝学的研究によって、当該生物のNotchシグナルにおいてTM2D1、TM2D2、TM2D3各ホモログの3つの遺伝子が共同してひとつの機能を担うことが示唆されている(Salazar et al. TM2D genes regulate Notch signaling and neuronal function in Drosophila. PLOS Genetics 2021;17:e1009962.)。組換え型TM2D1およびTM2D2タンパク質についてはTM2D3タンパク質と同様多量体形成等のそれぞれの性状を検討するとともに、TM2D3を含めたこれらの物理的相互作用を検討する。またpull down assayに組換え型TM2D1、TM2D2タンパク質を添加して再検討する。さらにTM2D1およびTM2D2の哺乳類細胞用の発現ベクターを構築し、これらの293T細胞における過剰発現がTM2D3のそれと同様にNotch1を活性化するか、また組み合わせて発現した際の相乗効果等を検討する。 作製した抗TM2D3抗体がWestern blottingにおいて細胞溶解液中の変性したTM2D3を検出できない理由として、抗原としてTM2D3多量体を用いたため主に多量体に対する抗体が産生されたことが考えられる。そこで変性して単量体にしたタンパク質を抗原として再度抗体を作製する。成功したらTM2D1およびTM2D2に対する抗体作製も試みる。 米国における状況は改善してきている模様であり、先日MMRRCとの調整を開始した。本年度中にTm2d1とTm2d2のKOマウス系統の入手と飼育・解析が開始できることが期待される。 アルツハイマー病の研究に関しては、C57BL/6系統への戻し交配が目標の10回をこえたので、Jackson研究所からモデルマウスを入手して交配を開始する。
|