研究課題/領域番号 |
19K07445
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
康 徳東 昭和大学, 医学部, 講師 (00571952)
|
研究分担者 |
本田 一穂 昭和大学, 医学部, 教授 (10256505)
高木 孝士 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10774820)
澤 智華 昭和大学, 医学部, 講師 (80422541)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 質量分析法 / 近位尿細管傷害 / 抗刷子縁抗体病 / 尿細管間質炎 / 近位尿細管上皮傷害 / 液体クロマトグラフィータンデム型質量分析 / Heymann腎炎 / Megalin |
研究開始時の研究の概要 |
新しく腎疾患概念として提唱された抗刷子縁抗体病は、重篤な腎尿細管障害により急速に腎機能が低下する予後不良の疾患である。2016年までは原因不明の腎尿細管障害として認識され、発生機序の解明と治療法の開発が急がれている。近年高感度のLCMS/MS法を用いた微量タンパク質解析の著しい進歩により、疾患メカニズムに関連した因子の解析が原理的に可能になってきた。抗刷子縁抗体によるHeymann腎炎ラットモデルを作成し、ヒトに類似した近位尿細管上皮障害と間質炎症を再現し、抗刷子縁抗体病における尿細管間質炎メカニズムを解明する。
|
研究実績の概要 |
「背景」:抗刷縁抗体病は、新しい腎臓疾患概念として提唱されており、急速に腎機能が低下し、予後不良となる深刻な腎尿細管傷害を引き起こす疾患である。この疾患は血中のMegalinに対する自己免疫抗体に関与しているが、尿細管障害を引き起こすメカニズムについては不明な点が多く存在している。 「方法」:本研究では、SDラットから抽出された腎近位尿細管刷子縁蛋白(FxA1)抗原を用い、Lewis/SsNSlc(Lewis)ラットを免疫した。 5週齢Lewis ラットの皮下投与を行い、Heymman腎炎のLow Dose群 とHigh Dose群を誘導し、未投与のLewisラットを対照群とした。6週から16週までにラットを屠殺し、採血及び腎臓の摘出を行い、生化学及び病理学的に評価した。また、レーザーマイクロダイセクション(LMD)と高感度液体クロマトグラフィータンデム型質量分析(LC-MS/MS)法を用い, 近位尿細管のプロテオーム解析を行った。 「結果」: Heymman腎炎モデルラットは対照群に比べ、血清Cr値の上昇とともに尿細管間質炎を形態学的に認め、蛍光抗体法では近位尿細管基底膜にMegalinやIgGやC3の共沈着が見られた。モデルラットの近位尿細管には一部の刷子縁が欠損し、Megalinの陽性像も確認できない。また、LMD-LC-MS/MS法を用い、近位尿細管細胞にはエンドサイトシスに関与するMegalinとCublinやRasスーパーファミリー属するRabタンパク質などの変化も発現され, 2群において傷害に関連するタンパク質に有意な差も認められた。 「結論」:Heymman腎炎モデルラットでは、LMD-LC-MS/MS法により近位尿細管から微量な蛋白が発現でき、近位尿細管のエンドサイトシス障害も含め抗刷子縁抗体病の尿細管間質障害の発症及び進行に関連する因子も同定できると考えられ、本疾患の発症機序の解明及び治療標的への可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究計画であるHeymman腎炎モデル(A H N)ラットを用い、レーザーマイクロディセクッショウと質量分析法を併用し、近位尿細管の網羅的な検討は十分に遂行し、エンドサイトシス障害に関連するタンパクを着目した。現時点では、使用動物の匹数を計画通りの範囲内で使用し、Low Dose群 とHigh Dose群において有意義な関連因子の発現を検討した。質量分析で得られた結果を免疫染色、Westernblot及びELISAなどの免疫学的手法で確かめており、検出された蛋白因子の間の関連性及びエンドサイトシスやトランスサイトシスのPathwayを解明する知見が得られた。以上から、得られたpositive dataを説明・補完する結果を得られており、大きな支障なく研究を進んでいる。以上の経過より、おおむね順調な進歩状況を判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
Heymman腎炎モデルを用いて抗刷子縁抗体病の尿細管間質障害因子の同定は進んでいる。 ①免疫されたウサギからMegalin 抗体を準備でき、Passive Heymann nephritisの作成を進める。 ②大量タンパク尿による尿細管障害を評価するため、アドリアマイシン腎症のネフローゼ症候群モデルを準備する。各群には傍尿細管毛細血管から抗体や高度蛋白尿による近位尿細管細胞の影響を加え、炎症反応の再検証を行う。 ③近位尿細管のプロテオーム解析および透過型・走査型電子顕微鏡法を行い、傷害した部位にある特異的なタンパクの発現と形態学的炎症反応を検討する。 ④近位尿細管機能障害が病態に関わる、Active Heymann nephritisおよびPassive Heymann nephritisモデルでの共通傷害因子の検討を計画している。
|