研究課題/領域番号 |
19K07491
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
山崎 達也 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50624087)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 抗体遺伝子 / 遺伝子免疫 / アジュバント / RP105(CD180) / TLR / B細胞 / インフルエンザウイルス / 糖鎖 / DNA免疫 / 遺伝子ワクチン / ワクチン / 感染症 / 自然免疫 / ヘマグルチニン / RP105 / インフルエンザ |
研究開始時の研究の概要 |
ワクチンにおいてアジュバント(免疫賦活化物質)開発は重要である。一方で、自然免疫受容体のRadioprotective 105 (RP105)に対するアゴニスト抗体(RP14)は、抗体産生細胞(B細胞)を強力に活性化する。さらに“抗体”は特異性が高いので副反応が少ない。以上から、研究代表者はRP14をインフルエンザワクチンのアジュバントへ応用できないかと考えた。 本研究では、抗原特異的B細胞を効率的に活性化するために、RP14と抗原を生体内で局所的(細胞膜上)に発現させてアジュバント効果を評価する。 RP14のアジュバント効果を明らかにし、副作用の少ない新しいワクチンアジュバント開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
TLRファミリー分子のRadioprotective 105(RP105)に対するアゴニスト抗体(RP/14,ラットハイブリドーマ由来)は強力なB細胞活性化能がある。タンパク抗原とともにRP/14をマウスへ接種することで、抗原特異抗体レベルの増強効果(アジュバント効果)が示されている(Chaplin J W et al J Exp Med)。本研究では、RP/14を発現する「抗体遺伝子」を、遺伝子免疫におけるアジュバントへ応用することを目指している。タンパク抗体に比べ抗体遺伝子の精製コストは低く、また遺伝子工学技術で容易にその抗体構造を変えられるという利点がある。 これまでの成果として、膜貫通ドメイン遺伝子を付加したRP/14抗体遺伝子(膜型RP/14)とインフルエンザウイルス抗原遺伝子をマウスに同時に投与すると、抗原特異的抗体レベルは有意に上昇することを報告した(Yamazaki T et al Front Immunol 2020)。昨年度では、RP/14抗体遺伝子の最適化を検討した。マウスにおける抗原性を低くするため、用いた膜型RP/14は、可変領域以外の定常領域(C)遺伝子をマウス遺伝子に置き換えていた(キメラ膜型RP/14)。しかし、キメラRP/14のB細胞活性化能は、オリジナルのRP/14に比べかなり低下していたので、定常領域の一部(CH1)をラット遺伝子に復帰させたところ、そのB細胞活性化能は著しく上昇した。 昨年度のこの知見をもとに、キメラ膜型RP/14の遺伝子構造を修正し、ウイルス抗原とともにマウスに投与したが、高いレベルのアジュバント効果は得られなかった。Chaplinらは、RP/14と抗原の共有結合がそのアジュバント効果に必須であるとしている。そこで、膜型RP/14とウイルス抗原の融合遺伝子を作製し、B細胞活性化能を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の課題として、以下3点をあげていた。1.修正したキメラ膜型RP/14抗体遺伝子のアジュバント効果の評価(上記記述)、2.キメラ膜型RP/14抗体遺伝子とウイルス抗原遺伝子の融合遺伝子の作製、3.遺伝子投与方法(エレクトロポレーション法)の検討。今年度は、主に「2」の検討に取り組んだ。 本研究で使用しているインフルエンザウイルス抗原は、ウイルスの膜タンパクの1つヘマグルチニン(HA)である。HAは感染受容体に結合するタンパクであるので、ワクチンの主要なターゲットである。まず最初に、キメラ膜型RP/14抗体遺伝子とHA遺伝子を単純に融合した遺伝子を作製したが、発現を確認できなかった。次に、HA遺伝子の一部の遺伝子とキメラ膜型RP/14抗体遺伝子を融合した遺伝子を作製したが、こちらも発現を確認できなかった。そこで、RP/14抗体のFab(可変領域+定常領域CH1ドメイン)とHA遺伝子を融合した遺伝子を作製したところ、両者を細胞膜上に発現できた。このRP/14(Fab)+HA遺伝子からは、膜タンパクであるHAのN末にRP/14(Fab)が付加した構造が発現する。しかしながら、このRP/14(Fab)+HAを細胞膜上に発現させて、脾臓B細胞と共培養しても、B細胞の活性化は認められなかった。さらに詳細な構造の検討が必要であると考えられた。ゆえに、今年度は「3」の検討には着手できなかった。 本研究の目的である、RP/14抗体遺伝子をアジュバントへ応用するために、RP105を介したB細胞活性化メカニズムの詳細を解明することも重要である。RP105は、可溶性タンパクMD-1と会合することで、細胞膜上に発現できるとされている(Miura Y et al Blood 1998)。なぜ細胞膜上の発現にMD-1が必須であるのかは不明であったが、その一端を解明することができた(下記に記述)。
|
今後の研究の推進方策 |
RP105の細胞膜発現におけるMD-1の役割を解明するため、ヒト(h)RP105/hMD-1をHEK293T細胞に発現させるモデルを用いて、MD-1の有無におけるRP105の発現をウエスタンブロッティングで解析した。まずMD-1の存在下では、大きさの異なる2本のバンドが検出された(サイズの大きい方を「U form」, 小さい方を「L form」とした)。興味深いことに、MD-1非存在下におけるRP105の発現は、L formのみが検出された。 そこで、RP105やMD-1に付加した糖鎖に着目し、それぞれの糖鎖欠損変異体を作製した。まず糖鎖欠損RP105をMD-1とともにHEK293T細胞に発現させたところ、L formが主に検出された。ゆえに、RP105の2つのformの形成には糖鎖付加が重要であることが示唆された。また糖鎖欠損RP105は細胞膜発現レベルが著しく低下したことから、U formの形成が細胞膜発現に重要であると考えられた。つぎに、糖鎖欠損MD-1を作製してRP105とともに発現させたところ、L formが主に検出された。これらの結果より、MD-1に付加した糖鎖はRP105の糖鎖付加に関与することで、RP105の細胞膜発現を制御している可能性が示唆された。以上の結果は、論文報告することができた(Biswas M et al FEBS lett 2022)。次年度では、RP105の2つのformを区別できるモノクローナル抗体を作製し、B細胞活性化メカニズムにおける両者の寄与を解明する。 また、RP/14はRP105を架橋することでB細胞を活性化する、とされているが、実際にそれを証明した報告はほとんどない。次年度では、RP/14のエピトープを同定し、構造的なアプローチで、RP/14によってRP105が架橋されるかどうかを解明する。
|