研究課題/領域番号 |
19K08136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, シニアフェロー (60201729)
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研究分担者 |
徳永 千穂 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30451701)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 微小血管造影検査 / 放射光単色X線 / 非対称反射光学素子 / K吸収端 / 血管造影剤 / 放射光X線イメージング / 放射光 / 放射光単色X線 / 放射光X線イメージング / 血管造影検査 / 微小血管造影システム / 放射光医学応用 / X線イメージング / 血管造影 / 単色X線 / X線光学系 / 微小血管系 / 微小血管造影 / X線光学素子 |
研究開始時の研究の概要 |
血管系そのものや悪性腫瘍などの疾患の機序解明、薬理効果の評価などの研究を推進できる放射光単色X線による微小血管造影システムを用いた医学応用研究の進展のなかで、時間分解能に関する必要性が認識され、より大きな強度の単色X線が必要となっている。本研究では、X線検出器の開発動向なども考慮しながら、微小血管系評価に最適な特性を持つ放射光単色X線を得るためのX線光学素子に関する基礎的知見を得ることを研究目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、放射光単色X線による微小血管造影検査において対象臓器・対象疾患に関する高精度の評価を実施するため、より最適なX線光学素子に関する知見を得ることが目的である。今年度は、昨年度に引き続いて、最新のX線検出器を用いた放射光微小血管造影システムに関してX線画像の空間分解能、濃度分解能などに関する物理的評価実験および特定疾患の医学的評価に関する知見を得るために小動物を用いた実験を実施して、腎臓血管系、心臓血管系、肺血管系の評価方法に関してそれぞれの評価目的に必要な物理的特性と医学的観点からの手順について更なる新しい知見を獲得することができた。さらに、それらの実験的評価に基づいて従来から利用してきたX線光学系とは異なるX線光学系の利用に関する検討を実施した。微小血管造影検査では対象臓器・対象疾患の動的評価が重要であり、1枚の画像を短時間で取得する必要があって対象の評価に最適なS/Nを持つX線画像を得るためには適切なX線光子数が必要である。そのため、放射光単色X線の積分反射強度を更に増強するために1枚のシリコン結晶のみを用いる方法を具体的に検討した。血管造影剤(ヨウ素が主成分)によるX線吸収が大きいヨウ素のK吸収端上側のエネルギー(33.3 keV)の単色X線を得るために従来から既存の放射光ビームラインに設置されている二結晶分光器を利用してきた。二結晶分光器はX線エネルギーを変えても同じ位置に単色X線を出射させるために2枚のシリコン結晶を用いて単色X線を得ている。今回、シリコン結晶1枚の(111)面の非対称反射を利用することで、非対称反射によって作成された大きなX線照射面により小動物の腎臓などの左右臓器を同時1枚のX線画像で高空間分解能にて評価できること、画像上で従来と同等以上の単色X線強度を得ることができることを実証できた。今後、更に実用的な評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症の関係で、一部、予定していた放射光利用実験(評価実験)が実施できなかったが、過去の実験データを含めて新しく得られた実験データに関する画像処理を進めることができて、微小血管造影システムに関する物理的・医学的知見の蓄積ができた。また、新しく試験的に導入したシリコン結晶1枚の非対称反射を利用するX線光学系が大変有用であることを実験的に実証できたことは大きな成果であった。利用している放射光ビームラインは世界で唯一の縦偏光・縦長放射光を発生することができる挿入光源(縦型ウィグラー)からの放射光を利用できる。このため、縦長の放射光単色X線を利用できて水平方向に機能する非対称反射X線光学素子を設置することで水平方向の放射光ビームサイズを拡大でき、微小血管系検査に必要な二次元照射面を得ることができる。このイメージングシステム配置でも放射光発光点での電子ビームサイズは相対的に垂直方向が小さいので、垂直方向の幾何学的な画像上のボケは小さく、利用する二次元照射面での垂直方向の空間分解能劣化に繋がらないことも大きな特長となっている。そのため世界最大の大型X線干渉計を設置できているが、大型X線干渉計の製作方法から放射光ビームラインの二結晶分光器は大型X線干渉計のX線回折面と同じシリコン結晶の(220)面を利用している。今回導入したシリコン結晶の(111)面を利用する方法は、X線回折強度の観点からも有用であり、シリコン結晶の熱負荷対策としての冷却機構、画像のS/Nを劣化させる原因となる放射光実験ハッチ内の散乱X線の問題などもないことが確認できて、今後は微小血管造影システムではこのX線光学系を用いていくことになると考えている。また、昨年度の研究成果については、現在、国際学術誌に論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの放射光利用実験結果と各種解析結果を考慮して、引き続き、放射光を用いた評価実験を実施する予定である。今年度は昨年度に新しく構築したX線光学系を用いた微小血管造影システムにより、医学的観点からの評価実験を目的別(腎臓血管系、心臓血管系、肺血管系など)の小動物試料によって実施する予定である。今年度は、大きなX線照射面を確保できるとともに単位面積当たりのX線光子数が昨年度までの微小血管造影システムと同等以上であるイメージングシステムを利用できるので、微小血管造影システムの利用に関する実用的な評価が可能になると考えている。それらの実験結果や実験データの各種解析結果を含めて、本研究の最終年度として研究推進に関する全体のまとめを行う予定である。
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