研究課題
基盤研究(C)
本研究は肝癌の原因として重要で、かつ現在世界的に増加中のNASHについて、その病態解明を通じて発癌予防法を開発することを目的とする。ほぼすべての肝癌は慢性肝疾患から発症するため、本検討では背景肝、つまり線維化進展や肝硬変に着目して解析することにより、新規アプローチによる発癌予防法の開発を目指す。特に背景肝におけるEGFRの活性化が発癌イニシエーションに関わることに初めて着目した検討であり、天然化合物によるEGFR抑制という新規アプローチにより、NASHに対する発癌予防法の確立を目標とする。
代表的な癌シグナルであるEGFRシグナルは慢性肝障害で活性化しており、EGFRを標的としたNASH肝癌予防法を探索した。まず抗癌作用が報告されているホノキオールHNKに着目した。NASH肝癌マウスにHNKを投与したところ、著明な発癌抑制効果を認めた。さらにヒト肝臓検体の解析により、NASH進行例および肝癌症例ではEGFRの分解機構であるGR-MIG6が低下しEGFRシグナルが促進していること、HNKがGR-MIG6を活性化しうることを示した。さらにHNKは線維化進展を抑制しうることを見出した。ドラッグリポジショニングの観点で、臨床に貢献できる知見を得ることができたと考えられる。
肝癌は一度発症すると、再発を繰り返す難治性で予後不良の代表疾患である。正常肝から発症することはまれであり、ウイルス性肝疾患や脂肪肝などが進行し、肝硬変を代表とする線維化の進行した状態から肝発癌することが一般的である。本研究は、癌シグナルとしてよく知られるEGFRシグナルが、NASH肝で線維化が進行するとともに活性化する可能性、ならびに漢方薬として内服することができる天然化合物ホノキオールが肝癌のみならず、背景肝にも効果を発揮することでNASH肝癌の治療ならびに発癌予防に繋がる可能性を示したことで、学術的のみならず、社会的意義も大きいと考えられる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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