研究課題
基盤研究(C)
申請者は先行研究によりがん幹細胞と分化したがん細胞とでは概日周期の頑健性が異なることを発見した。このことからがん組織中には多様な概日周期を示す細胞集団が存在することが示唆される。本研究ではマウスの大腸がん組織の経時的な採取・一細胞リアルタイムPCR解析を行うことで、がん組織内のがん幹細胞・分化細胞、周辺の正常細胞について概日周期の多様性を調べ、細胞周期の日周期変動・細胞の分化・がんの悪性度との関りを研究する。加えて概日周期の人為コントロールによるがんの抑制や、がん組織内の細胞周期の日周期変動を利用した治療戦略のための基礎研究を行う。
ヒト大腸癌とヒト骨肉腫細胞を用いた研究により、幹細胞性が高い細胞は、概日周期が弱いことを発見した。また通常の細胞では概日周期により細胞周期が制御されているが、幹細胞性の高い細胞では逆に細胞周期によって概日周期が制御されていることを示唆する結果をクロマチン免疫沈降と細胞周期阻害剤による実験によって得ることができた。更に正常細胞では化学療法薬投与により、細胞障害を受けやすい時間帯が存在するが、癌幹細胞ではないことから、正常細胞に対して影響の少ないタイミングで化学療法を行うことで、体細胞への副作用を抑え、がん幹細胞へは効果の高い治療を行うように応用することが可能と考えられる。
がんに対する化学療法では様々な副作用が予後不良につながることが広く知られている。これは化学療法薬が細胞分裂を行う細胞をターゲットとすることで、がん細胞のみならず体内の正常幹・プロジェニター細胞にも細胞毒性を発揮することに起因すると考えられている。体細胞の分裂は一般的に夜間に起こることが知られているが、報告者らの研究ではがん幹細胞の細胞分裂は一日中起こっている。そのことから体内での半減期の短い化学療法薬(5-FU)などを、体細胞の分裂しない日中に投与することで、体細胞への副作用を抑え、がん幹細胞へは効果の高い治療を行うように応用することが可能と考えられる。
すべて 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
EMBO J
巻: 41 号: 2
10.15252/embj.2020106973
Biomicofluidics
巻: 15 号: 1 ページ: 14110-14110
10.1063/5.0036527
iScience
巻: 23 号: 3 ページ: 100963-100963
10.1016/j.isci.2020.100963