研究課題
基盤研究(C)
低出生体重児として生まれた場合、成人後に循環器疾患を含めた生活習慣病リスクが上昇することが知られている。日本で生まれる子供の約10%が低出生体重児であり、将来的に循環器疾患発症のハイリスク群となることが予想されるが、リスク上昇の機序を明らかにした報告はない。申請者は“周産期の環境ストレスに伴う変化はどのような形で保存され、成人後のリスク上昇に寄与するのか?”、という問いに対して、特にDNAメチル化状態の変化に注目することで、表現型の変化を説明しうる分子実態を同定することを目指す。
低出生体重マウスモデルを用いた検討の結果、新生仔期には全身でケトン体合成が亢進していることが明らかとなった。ケトン体は飢餓時のエネルギー源として知られる一方、近年エピゲノムにも影響を及ぼすことが報告されている。そこで、DNAメチル化などのエピゲノム変化にケトン体代謝が関与している可能性を考え、ケトン体合成の律速段階酵素であるHMG-CoA synthase2(Hmgcs2)のノックアウトマウスの作成を進めた。Hmgcs2 KOマウスは致死的表現型を示さないものの、脂肪肝が悪化し、ケトン体合成にミトコンドリアを保護する作用があることが明らかとなった。
本研究を通じて、偶然にもケトン体代謝の新たな機能を知ることができた(Arima Y, Nature Metabolism 2021)。現在このモデルを用いてDNAメチル化やヒストン修飾の変化を解析中である。今後ケトン体代謝によるエピゲノム制御機構が明らかになることで、周産期環境ストレスがどのように遺伝子発現に影響し、将来の表現型に変化を加えるのか、明確な分枝基盤に基づいて説明することが可能となる。またケトン体代謝については健康や老化の観点からも注目されており、これらの健康長寿研究にたいしても、新たな解析ツールとして有用である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20210219