研究課題
基盤研究(C)
肥満に伴う腸内細菌叢(フローラ)の変化や腸管バリア機能の破綻が肝発癌へどのように関与するのか、その役割を解明する。その後、臨床試験で肥満症例に対し肥満治療を行い、治療後の腸内フローラ、腸管壁バリア機構、肝機能、脂肪肝、線維化の評価を非肥満症例と比較検討し、1年の経過観察での癌再発の状況について検討する。そして肥満症例と非肥満症例の糞便を脂肪肝炎から肝癌を発癌するモデルマウスに移植して発癌状況を評価し、肥満治療+運動療法による発癌抑制効果を検討する。
本研究は肥満が肝発癌に及ぼす影響について腸内細菌叢(フローラ)のバランスの変化(破綻)がかかわっていることを解明し、それに基づいた発癌予防策の確立を目的として行った。肥満患者に対する肥満治療で腸内フローラの破綻が軽減し、癌再発が抑制されるかに関して臨床試験を行った。同意を得られた肥満患者に対し食事療法(25kcal/kg標準体重/日,治療前体重の3%以上の減量目標)による肥満治療を行い(肥満群)、また非肥満患者には30kcal/kg標準体重/日の標準的な食生活を指導する(非肥満群)臨床試験を行った。肥満症例では、登録症例全例で肥満治療により全例治療前体重の3%以上の体重減少を達成した。手術前の腸内フローラは肥満群(9例)では非肥満群(6例)と比較し、Firmicutes門が増加し、Bacteroidetes門が減少していた。肥満群と非肥満群では無再発生存率に差は認められず(3年/4年:88.9%/88.9% vs 83.3%/83.3%, p = 0.806)、Histologicalに臨床試験以前の肥満症例と比較して無再発生存率は2群と比較して統計学的な有意差は認められなかったが(3年75.0%、P=0.471)、4年無再発生存率が60.0%と低下し、肥満治療群で背景肝からの再発(多中心性発生3年以降の再発)が抑制される可能性が示唆された。無菌マウスに肥満治療前後の糞便を移植し肝発癌に差が認められるかを試みたが、糞便生着後発癌誘導後に全身状態悪化したため中断しSacrificeした。肝組織の病理学的所見では肥満治療後糞便移植マウスでは肥満治療前糞便移植マウスに比べ肝障害が高度であった。臨床的には肥満治療は肥満肝癌術後再発を抑制されることが示唆されたが肥満治療による腸内フローラの変化が誘因であるかまでは解明できなかった。
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