研究課題/領域番号 |
19K09236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 英記 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20747117)
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研究分担者 |
齋木 佳克 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50372298)
安達 理 東北大学, 大学病院, 医員 (30375092)
吉岡 一朗 東北大学, 大学病院, 助教 (90770272)
鈴木 智之 東北大学, 大学病院, 助教 (10837157)
鈴木 佑輔 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70791698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 冠動脈バイパス術 / 静脈 / 血管 / 冠動脈バイパス手術 / エネルギーデバイス / マイクロ波 / 大伏在静脈グラフト / no touch technique / μ波切断器 / 大伏在静脈 / ずり応力 / 血管吻合 / 組織障害 / 血管変性 / 静脈グラフト / no-touch technique / マイクロ波メス |
研究開始時の研究の概要 |
2017年に国内で12,000件を超える冠動脈バイパス術(CABG)が施行されている。CABGの治療効果を最大限にするにはバイパスに使用する血管が重要で、脚の静脈は採取が容易でかつバイパスのバリエーションに非常に有用である。しかし、静脈は10年で約半数がつまってしまう。一部の施設からno-touch techniqueと呼ばれる静脈の採取法が報告され良好な開存性を示しているが、 データが少ないため一般化していない。そこで、今回マイクロ波メスを用いてno-touch techniqueをブタを実験動物として行い、詳細なデータを示しその有効性を評価する。
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研究実績の概要 |
狭心症や心筋梗塞の治療法として冠動脈バイパス術は一般的な治療法である。近年静脈グラフトの採取法を工夫することで動脈グラフトに匹敵する成績が報告さ れるようになった。静脈グラフトを採取する際に直接血管壁に触れずに周囲脂肪と一塊 にして摘出し、従来法のように採取時の血管攣縮解除のための血管拡張 手技を行わない、この一連の操作がno touch techniqueと呼ばれるものである。しかし手技の問題点として血管の枝やリンパ管の処理が煩雑となる部分があり、 術後のグラフトからの出血や採取部のリンパ瘻の発生、さらには組織欠損に由来する創傷治癒遅延による創部感染症につながることもあり手技自体の効率化が望 まれる。そこで我々は新規のエネルギーデバイスを使用しno touch techniqueで血管の採取を行うことを考案した。使用する機器はμ波を用いたエネルギーデバ イスであり、本邦で開発されたものである。2017年4月に発売されておりすでに消化器外科や呼吸器外科の鏡視下手術、甲状腺、乳腺の手術で用いられている。 血管を挟んで止血と切開が同時にでき、組織を挟んだ部分にのみ作用するので周囲組織への損傷が最小限となることが期待されている。μ波を用いたエネルギー デバイスを用いて血管採取を行い、手技の質の改善が得られるかどうかを検討している。家畜ブタ、ミニブタを用いた実験を検討しており血管採取直後に摘出標本の一部を用いて開存性に関して重要とされる組織構造が保ているか、血管機能が保たれているかを病理学的、生理学的に評価する。さらにブタを使用 して冠動脈バイパス術を行い慢性期モデルを作成し、開存度、病理変化、血管造影による血管全体の内腔評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
家畜ブタ、ミニブタを用いてno touch techniqueで採取した静脈グラフトで冠動脈バイパス術を行い慢性期にグラフト評価の実験を行う予定であった。 ヒトの大伏在静脈のように静脈単独で走行しているものは乳腺静脈であった。しかし病理組織の検討や血管径などの肉眼的な評価からヒトの大伏在静脈と異な り、ブタの乳腺静脈は外膜が発達しており血管の拡張手技を加えても変化が乏しかった。また25-30kgの家畜ブタを用いて実際に乳静脈を用いて冠動脈(左前下行枝)に人工心肺を用いない冠動脈バイパスを行った。両側乳静脈を一方は脂肪組織をつけない従来法で採取。もう一方は脂肪組織と一塊にして血管壁に直接触れないno touch techniqueで採取した。その後胸骨正中切開を行い、左内胸動脈を採取。採取した乳静脈と端々吻合を行 いコンポジットグラフトを作成し心拍動下に冠動脈バイパス術を行った。今回は拡張時間を変えたり、拡張圧を変える、採取時に血管拡張剤を周囲に注入することで一定の血管径を得られた。しかし、十分な冠動脈血流量を得ることはできていない。静脈グラフトから分枝した血管部位でのシーリングに関しては超音波を使っている類似のデバイスと比較して遜色ないものであった。 臨床ではすでにマイクロ波エネルギーデバイスを用いた大伏在静脈グラフトを採取し良好な開存率を得られており、その成績に関しては2022年6月にカナダのオタワでSociety of Thoracic Surgeryが主催する2022 Coronary Conferenceで発表、また2022年12月に東京でInternational Coronary Congeressで当院での成績を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
この新規のマイクロ波を用いたエネルギーデバイスは臨床現場において血管やリンパ管のシーリングにより止血や術後のリンパ瘻の減少など間接的に効果を認識することは可能である。実臨床における注意点を検索するためにも卵白を使用して、どのように熱が伝えられているかなどを評価し、病理学的評価のみならず実際の実技に関連する特徴に関しても模索していく。
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