研究課題
基盤研究(C)
産科出血は妊産婦死亡原因の第一位で、毎年60人前後の妊産婦が死亡している。危機的出血に陥った場合は早期からの輸血が必要となるが、日本では分娩の半数以上が産科一次施設で行われており、輸血準備が十分とは言えず、初期治療に遅れ死に至ることも少なくない。本研究では産科危機的出血時の蘇生をHbVで行い、救命することを目標とする。妊娠末期のウサギに産科危機的出血を生起させ、凝固障害・低血小板状態・貧血を伴う出血性ショックの病態モデルを確立する。これに赤血球輸血の代替としてHbVを投与し、急性期の救命効果を検証するとともに、止血凝固能や体液代謝調節への影響も検討する。
人工酸素運搬体(Hemoglobin Vesicle:以下HbV)はリポソームにヒト由来のヘモグロビンを内包し、Hb 10g/dLに相当する酸素運搬能を有している。室温で2年と長期保存が可能で、感染リスクがなく、血液型に関係なく輸血できるという特長があり、赤血球輸血の代替物として注目されている。我々は、出血量が50mL/kg/hour以上となり、膠質液の輸液だけでは末梢循環不全に至る重篤な産科大量出血モデルを開発し、これに対して、赤血球輸血の代替としてHbV投与を行うことで出血性ショックを防止しうること、ならびに産科危機的出血に陥った場合でもHbV投与によって救命しうることを明らかにした。
産科危機的出血はこの十数年間、妊産婦死亡の原因の第一位である。危機的出血に陥った場合は早期からの輸血が必要となるが、初期治療に遅れ死に至ることもある。今回我々は、末梢循環不全に至る重篤な産科大量出血モデルを開発し、これに対して、赤血球輸血の代替として人工酸素運搬体(HbV)投与を行うことで出血性ショックを防止しうること、ならびに産科危機的出血に陥った場合でもHbV投与によって救命しうることを明らかにした。産科一次施設での輸血治療は補給の観点から困難なことが多いが、HbV投与はそれを代替し、産科危機的出血の新しい救命戦略につながるものと期待される。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Scientific Reports
巻: 11 号: 1
10.1038/s41598-021-01835-w
American Journal of Obstetrics & Gynecology
巻: 224 号: 4 ページ: 398-398
10.1016/j.ajog.2020.09.010
循環制御
巻: 41 ページ: 89-91