研究課題/領域番号 |
19K10156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 (2021-2022) 九州歯科大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
諸冨 孝彦 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (10347677)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | オゾンナノバブル水 / バイオフィルム / 歯科用コーンビームCT / 覆髄 / 生体活性ガラス / 生体適合性 / 象牙質 / 象牙質-歯髄複合体 / 再生療法 / bioactive glass / 硬組織形成 / 象牙質ー歯髄複合体 / heat shock protein / 直接覆髄 / ヒアルロン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、健全な歯の機能維持を担う一方で応諾性に乏しい歯髄を保存・再生させるために必要な、自然な象牙質および歯髄の発生及び修復機構を促進する生物学的活性を有する誘導剤の創製と、治療効果が高く一般的な歯科診療室で処置可能な覆髄および象牙質-歯髄複合体再生療法の確立を目的とする。 創製する新規薬剤は操作性に優れ、低侵襲性の填入が可能なヒアルロン酸高含水性ゲルを基剤とし、抗炎症作用、血管伸長及び細胞増殖誘導能、そして硬組織形成誘導能等の象牙質-歯髄複合体再生を積極的に促す能動的な生物学的活性能を付加するため各種薬剤・材料を添加する。これらが段階的かつ連続的に効果を発揮するような条件を検索する。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、前年度の年度途中における所属研究機関の異動に伴い生じた、研究活動続行のための研究設備および環境の構築・整備を行った。そのため前年度までの研究計画を変更し、環境構築・整備と同時進行で、現状の設備で研究の遂行が可能でかつ研究目的の達成に必要な研究内容につき検討を行った。 直接覆髄法の施術時には、露髄部の歯髄表層を2から10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を用いて洗浄するが(ケミカルサージェリー)、この操作により歯髄表層に壊死層が形成されるため、本研究の最終目標である生物学的現象を模倣した象牙質-歯髄複合体再生誘導の達成は困難である。また、壊死層の出現は、封鎖性の低下を招き、再感染の恐れを招く。これらの懸念を解消するため、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に変わる洗浄法の検討を行った。 歯周炎やインプラント周囲炎、骨髄炎での洗浄効果と安全性が報告されているプラス帯電性オゾンナノバブル水に着目し、これを歯内治療の際の安全かつ効果的な洗浄液として使用可能か否かにつき検討した。その結果、以下の条件(バブル水:平均粒子径: 198.5nm、濃度:1.4E+8 Particles mL、帯電極性:(+)、帯電量:平均+3.50 ± 0.09 mV、半減期:180day未満、オゾン濃度:1.31mg/L、溶媒:生理食塩水)において1分間作用させることで、Enterococcus faecalisによるバイオフィルムへのプラス帯電性オゾンナノバブル水による殺菌効果を確認した。 直接覆髄では、適切な術前診査による精度の高い診断が、歯髄保存の成否の鍵を握る。そのため、本年度は上記に加えて歯内治療における歯科用コーンビームCTによる診査・診断法についても検討し、報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度末に、それまで所属していた研究機関を退職し現所属機関へと異動したため、これまで遂行してきた研究活動を現所属機関でも同様に実施するための研究設備および環境の構築・整備に時間を要した。細胞培養のための設備が整い、また新型コロナウイルス感染症対策により規制されていた出張が許可されたことで細胞の移送が可能となり、細胞培養実験を再開することができたが、その時期が年度後半の時期となった。そのため、令和4年度に予定していた研究計画の実施が大幅に制限されることとなり、研究進捗状況が遅れる結果となっている。 しかし、その一方でこれまで想定をしていなかった、新たな歯内治療における洗浄法の検討を行うことができた。これは本研究課題の最終目標を達成し臨床応用への道を開くためには是非とも検討しておかねばならないものであった。今年度の研究の遂行によって、低刺激性による安全性と高い殺菌効果を併せ持つプラス帯電性オゾンナノバブル水の歯内治療への応用について、その可能性を見出し報告することができた。 他にも、本研究課題の最終目標を達成するうえで重要な画像検査による診査・診断法についても検討を行うことができた。歯髄保存療法の成否は、適切な診断に大きく左右される。しかし、現在歯髄保存療法における画像検査のゴールドスタンダードとなっている二次元エックス線画像検査では、情報が制限される。そのため、歯科用コーンビームCTによる診査・診断の有効性についても検討し、報告することができた。 令和5年に入り、上述のとおり細胞培養法が可能となった。これまでに、生体活性ガラス配合セメントの歯髄由来細胞への影響を確認しており、さらなる研究の遂行を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、以下のとおり研究を遂行する。 1)プラス帯電性オゾンナノバブル水による細胞への影響:令和4年度に、プラス帯電性オゾンナノバブル水がEnterococcus faecalisによるバイオフィルムの殺菌に効果を発揮することが確認された。一方で、細胞への影響は軽微と予測されるもののその確認が必須である。そのため、プラス帯電性オゾンナノバブル水が歯髄細胞へと及ぼす影響につき、詳細に検討を加える。 2)生体活性ガラス配合粉末の歯髄細胞へ与える影響と覆髄効果の確認:現時点で直接覆髄薬(剤)としてのゴールドスタンダードであるMineral Trioxide Aggregate (MTA)に変わるバイオセラミックス材料として、生体活性ガラス配合セメントがある。この生体活性ガラス配合セメントの添加剤である生体活性ガラス配合粉末による、覆髄効果について検討し、その直接覆髄薬としての有用性につき検討する。 3)象牙質形成誘導能を有するヒアルロン酸高含水性ゲルについての開発:歯髄細胞の増殖および分化に適して、かつ21G程度の洗浄針による髄腔内注入が可能となる粘弾性を有するヒアルロン酸(HA)高含水性ゲルの条件を確認するため、水分含有率を細かく調整して多種類のゲルを作成し、in vitroにおける歯髄細胞の増殖および分化に最適な条件を検索する。 次に、この条件において直接覆髄剤としての機能を最大限に発揮することが可能な添加剤につき検討する。最初は上記研究計画2)で確認した生体活性ガラス配合粉末を用いて、その効果を三次元培養法を用いて確認する。さらに、これ以上の生物学的活性を有し、かつ安全性に優れる各種製剤や生理活性因子についても検索し、最適な添加剤候補となる薬剤・材料を同定する。さらにはラット覆髄モデル・断髄モデルを用いて、in vivoにおける効果につき確認する。
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