研究課題/領域番号 |
19K10229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 (2020-2022) 東北福祉大学 (2019) |
研究代表者 |
土谷 昌広 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (60372322)
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研究分担者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10272262)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90436139)
四釜 洋介 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 口腔疾患研究部, 副部長 (10588908)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 筋-筋膜性疼痛 / 顎関節症 / 好中球 / サイトカイン / 好中球細胞外トラップ / エラスターゼ / 慢性疼痛 / 筋衛星細胞 / 慢性筋痛 |
研究開始時の研究の概要 |
顎関節症に伴う慢性痛の多くは筋・筋膜性疼痛疾患と同様の症状を含み,異常な線維性構造(索状硬結)の存在と遷延化した炎症性サイトカイン産生を特徴とする.しかし,その発症メカニズムは不明な点も多く,治療法も確立されていない. 運動後の筋の超回復では細胞融合/取り込みが活発化し,障害(壊死)細胞をも取り込むことが報告されている2).本研究ではその現象に着目し,運動後に浸潤する好中球の取込み(細胞融合のエラー)が炎症性筋線維の形質転換に繋がることを明らかとする.以上を目的として,筋細胞の好中球取込みと炎症性筋線維の形成,および慢性筋痛組織における好中球の動態と炎症性について検討を行う.
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研究実績の概要 |
顎関節症に伴う慢性筋痛の多くは筋・筋膜性疼痛疾患(MPS)と同様の症状を含み,異常な線維性構造(索状硬結)の存在と遷延化した炎症性サイトカイン産生を特徴とする.しかしながら,その発症メカニズムは不明であり,治療法も確立されていない.運動後の筋の超回復では細胞融合/取り込みが活発化し,障害(壊死)細胞をも取り込むことが報告されている.本研究ではその現象に着目し,運動後に浸潤する好中球の取込み(細胞融合のエラー)が炎症性筋線維の形質転換に繋がることを明らかとすることを目的として行った. これまで①運動時の筋結合織内への好中球遊走とIL-1産生、および②炎症性サイトカインIL-1の筋衛星細胞(筋の幹細胞)の増殖/分化の誘導能について示してきた.本年度、好中球の組織内遊走と好中球細胞外トラップ(NETs)の発現について、Ly6G(好中球の膜タンパク、マーカー分子)とシトルリン化ヒストン(NETsの主要分子)を指標とした免疫染色やウェスタンブロッティングを用いてタンパクレベルでの発現について検討を行った.結果として、筋組織内におけるNETsの発現と蓄積についてあきらかとなった. 以上の結果から,軽度な筋組織外傷といえる運動疲労時において,好中球遊走とそれによる危険信号因子(DAMP)が誘導されることが示され,それらの作用は筋疲労やそれに伴う疼痛発現に繋がる可能性が示された.NETsは、DAMPの物理的な封じ込めの促進と炎症誘導による効率的な免疫向上、および周囲組織の損傷を最小限にとどめることとされており、本体が有害であるとは考えられないが、微弱な炎症を遷延化(慢性化)させる役割も示唆されている. NETsは好中球の主要な機能として知られる一方で、運動における生理的な意義については不明な点が多かったが、我々の結果は筋機能維持における好中球の機能的役割を示す所見であることが推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好中球によるNETs発現を示す論文がScientific reportsに無事掲載された.また、抗Gr-1抗体投与による好中球枯渇マウスでの結果も示すことで、筋痛と好中球の関係性についてより詳細な結果が示される予定である. また、本年度に示された,好中球欠損マウスにおける筋痛の改善は本研究の仮説を裏付ける上で非常に重要な所見である.当初の研究計画では本年度が最終年度であったが,令和5年度中に複数の学会・総会にて口頭にて研究発表を行う予定であり、1年間の期間延長行った. 以上のことからも,研究計画と比較しても非常に良好な進行具合を示すものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
Journal of Anatomyに掲載された論文を更に進める形で、咀嚼様運動モデルを用いて、令和4年度に得られた結果を口腔機能に当てはめ、分子レベルでの解析を進める予定である. また、好中球欠損マウスにおける糖代謝障害と易疲労性を示す筋活動量の減少は本研究の仮説を裏付ける上で非常に重要な所見であり,複数の運動モデルで確認、裏付ける作業は研究結果の再現性という意味でも非常に重要なカギを握る.当初の研究計画では本年度が最終年度となる予定であったが,順調に論文がアクセプトまでされたことにより令和5年度中には,日本疼痛学会や歯科基礎医学会などで研究発表を行い、今後の方向性を得ることが重要と考えられる.
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