研究課題
基盤研究(C)
申請者は、ビスフォスフォネート製剤を投与したマウスへのブドウ球菌接種による感染性骨壊死モデルを作成し、TNFαなどの炎症性サイトカインが、骨壊死の発生や破骨細胞を介した骨破壊を引き起こすのに必須の役割を担うことを明らかにした。しかし、口腔内の常在菌でも、同様のメカニズムで骨壊死を起こし得るかは明らかではない。ビスフォスフォネート製剤投与下に顎骨に抜歯等の侵襲的処置を加えることで骨壊死を起こすモデルを新たに樹立することに成功し、そこでより病態に近似したモデルを用いて口腔内常在菌による骨壊死・骨破壊性疾患の分子メカニズムを解明し、これらを制御することで骨破壊性疾患の新たな治療方法の確立を目指す。
骨吸収薬剤関連顎骨壊死動物モデルの報告は以前から行われているが、投与薬剤に注目したものが多い。顎骨のみで起こる特異性から、口腔内常在菌を骨壊死に至る要因と考えた。そこで、ヒトに類似した骨吸収薬剤関連顎骨壊死マウスモデルを新たに樹立し、我々が樹立したモデルを用いて解析を行った。その結果、細菌感染によってマクロファージから産生される炎症性サイトカインが骨壊死を代表とする骨破壊性疾患を惹起する可能性が示唆された。このことから、炎症性サイトカイン制御による口腔外科領域における抗炎症作用の機序を解明することができれば、その適応を広げ、口腔領域の炎症性疾患においても、新たな治療の可能性を導けると考える。
口腔内の炎症を伴う骨破壊性疾患である骨吸収薬剤関連顎骨壊死のヒトに近似した動物モデルの確立は、発症機序の解明や治療法の開発には欠かすことのできないものである.要因は、未だはっきりとは解明されておらず、歯科医師は治療前の休薬の必要性の判断を含めた方針の決定に難渋している現状である。また、ビスフォスフォネート製剤が、骨粗鬆症の治療以外に、がん治療など様々な病態に使用されていることから、顎骨壊死の患者数は多い。現在、主たる治療法として行われている、外科的治療アプローチに代わる新しい治療戦略が求められており、新たな治療戦略の可能性を見出す可能性のある本研究の結果は極めて重要なものであると考えている.
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J Bone Miner Metab
巻: - 号: 3 ページ: 372-384
10.1007/s00774-020-01174-2