研究課題
基盤研究(C)
近年、様々なサイトカインによる骨代謝制御の分子機構が明らかになりつつある。ウイルス感染によるI型インターフェロン(IFN-α/β)は、破骨細胞抑制に働くと報告されているが、IFN-α/β亢進を伴うSingleton-Merten Syndrome (SMS)患者では、顕著な全身的骨形成不全が報告されている。この原因遺伝子であるMDA5は骨芽細胞に強く発現することから、IFN-α/βの亢進が骨芽細胞に対して抑制的に働いていることが示唆されるが、その分子機構は解明されていない。本研究では、IFN-α/βの機能亢進を伴うSMS患者由来細胞を用いて、IFN-α/βの骨代謝制御における機能を解明する。
骨芽細胞分化誘導培地にて培養したヒト間葉系幹細胞へのI型インターフェロン添加により、骨芽細胞の細胞数減少と基質形成能の抑制がみられ、実験群での骨芽細胞分化マーカーの変化が見られた。加えて、JAK-STAT経路を介して誘導されるネクロプトーシス関連タンパクの発現も確認できた。JAK-STAT阻害薬を添加することで、上記の変化が抑制されたことから、I型インターフェロンがネクロプトーシスを主体とした細胞死を引き起こすと同時に、骨芽細胞分化へ影響を与えることが示唆され、JAK-STAT経路阻害薬によりそれらを抑制できる可能性も示唆された。
骨は体を支え、運動の軸となる臓器であり、骨代謝や形成の異常は様々な病気の原因となる。これまでに骨代謝や骨形成に関わる様々な因子が解明されてきたが、I型インターフェロン(IFN-I)が骨芽細胞や骨形成に与える影響については未解明である。先天性自己免疫疾患でありIFN-Iの機能更新が生じるSingleton-Merten症候群患者では末端部に骨吸収が生じることから、IFN-Iが骨代謝に何らかの影響を与えることは知られているが、その分子生物学的機序は不明である。本研究は、このような希少疾患の病態解明のみならず、IFNを利用した創薬や骨代謝異常を示す疾患に対する新規治療法開発に繋がることが期待できる。
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Sci Adv
巻: 5 号: 9 ページ: 7802-7802
10.1126/sciadv.aau7802