研究実績の概要 |
本研究は複雑性を伴う有酸素運動の学習が認知機能に及す効果を検討した。そこで週3回3ヶ月間(36回)にわたる運動教室(運動介入)を実施し、運動介入が及ぼす認知機能への効果について検討した。運動課題はエアロビックダンスとして運動の複雑性を段階的に高くすることにより認知的負荷が高くなると仮定し、主に前頭葉機能(認知的柔軟性、作業記憶)へのトレーニング効果について検討した。運動習慣のない大学生を対象とし公募による参加者を募り今年度は30名が適合者として実験に協力した。実験協力者を無作為に3つのグループ(テスト群(エアロビックダンス)、統制群1(有酸素運動)、統制群2(日常生活))に分割し介入前後の認知機能について比較検討した。 本研究は研究期間全体を通じて上記の運動介入を実施し、総数90名の実験協力者を得た。このうち分析対象者として条件を満たした69名について3群間の運動介入の効果について総合的な分析を実施した。無作為化比較対照試験として3群の内訳は、テスト群(25名,年齢20.6±.91,BMI21.7±3.9)、統制群1(24名,年齢20.7±1.31,BMI22.5±3.95)、統制群2(20名,年齢20.7±.95,BMI22.5±3.95)であった。認知機能は、認知神経科学的妥当性の高いPCベースのボタン押し判断課題とし認知的柔軟性(Flanker task)および作業記憶(N-back task)について検討した。3ヶ月間の運動介入の結果、テスト群と統制群1において作業記憶の明らかな向上が認められた。また、テスト群において認知的柔軟性も限定的ではあるものの向上する傾向が観察された。以上の結果から、ダンスのような複雑性の高い有酸素運動は認知機能改善に前向きな効果を及ぼす可能性が示唆された。
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