研究開始時の研究の概要 |
統計的推測における高次漸近理論は, 大標本論の中でも特にリスク関数の高次の項に着目し, 観測データを分析する統計的手法に関する理論体系であり, 1960年代から現在まで, 正則モデルを中心に様々な角度から詳細に研究されてきた. しかしながら, その中でも, 推定方式の高次の漸近許容性に関する理論体系は必ずしも明確にはなっていない. 本研究課題の目的は, 統計的推測の観点からリスク関数を通して, 推定量の高次の漸近許容性の理論の構築, および推定量の特徴付けを与えるという問題について, 未解決な問題を理論的に明らかにし, その構造を解明することである.
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研究実績の概要 |
変量間の関係を表す指標として、近年、距離相関係数に注目が集まっている。これは、Szkely, Rizzo and Bakirov (2007) によって提案され、ピアソンの相関係数の欠点を補っていることが示される(Edelmann, Mori and Szekely (2021))。そこで、今年度は、主に二変量正規分布における距離相関係数の二乗の推定問題を高次漸近理論の枠組みで研究した。具体的には、修正最尤推定量のクラス、及び最尤推定量、漸近不偏推定量、Jeffreysの事前分布に関するベイズ推定量等を含む適切な部分クラスを考え、この部分クラスに属する推定量が修正最尤推定量のクラスにおいて、2次漸近許容的となるための必要十分条件を導出した。その結果、最尤推定量と漸近不偏推定量は2次漸近許容的であるのに対し、Jeffreysの事前分布に関するベイズ推定量は2次漸近非許容的であることが分かった。さらに、2次漸近非許容的な修正最尤推定量に対しては、これを2次漸近的に優越し、かつ修正最尤推定量のクラスにおいて2次漸近許容的となる修正最尤推定量を構成することに成功した。新しく構成した修正最尤推定量が、元の修正最尤推定量を実際にどの程度改善しているかは、Relative Risk Improvementを通したシミュレーションによって確認することが出来た。なお、本研究の成果は現在、学術雑誌への投稿準備中である。
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