研究課題/領域番号 |
19K12022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
入部 百合絵 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (40397500)
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研究分担者 |
北岡 教英 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10333501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 認知症傾向検出 / 高齢者 / 対話データベース |
研究開始時の研究の概要 |
85歳以上の超高齢者を中心に大規模な対話データベースを構築するとともに,対話音声から認知症傾向を抽出する.認知症の早期発見のためには精神的・肉体的負担をかけずに日常の中から迅速かつ的確に診断できることが望ましい.認知症の症状は主に記憶障害,アパシー,言語障害,構音障害などである.対話音声には発話の抑揚・リズム・テンポなどの韻律情報や話した内容に関わる言語情報が含まれている.これらはいずれも認知症の症状に表れる情報を多く含んでおり,対話音声の言語的・音響的情報は認知症傾向の検出に有用である.以上のように,本研究では日常会話の中から精度良く検出可能な認知症判断手法を提案する.
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研究実績の概要 |
本研究は日常の雑談対話から認知症傾向を検出することを目的としている.令和2年度では認知症に関わる音響的特徴量を明らかにするとともに,過去に収録した名古屋と徳島の対話音声に含まれる方言の違いについて分析した.その結果,フォルマント周波数などの声道特性パラメータに有意な差が認められた.このことより,実用化を考えた場合には,対象者の方言による違いを考慮した認知症傾向検出手法を提案する必要があることが明らかとなった.一方,声道特性パラメータのような音響的特徴量以外にも,認知症傾向を捉える上で考慮すべき言語特徴量を検討する必要もある.そのため,3年目では認知症傾向に関連する言語特徴量について検討した.その結果,対話文における係り受け距離に有意な差が認められた.そこで4年目の令和4年度は,認知症傾向有無間で有意な差が認められた,助詞割合,一般名詞割合,係り受け(深度,距離)など言語特徴量を中心に,認知症傾向有無に対する2クラス分類を実施した.その結果,感度92.0%,特異度89.5%という結果を得ることができた.特に,先行研究で用いられてきた,語彙に関する言語的特徴量に,係り受けに関する特徴量を加えることで,感度が12.0%向上し,本提案の有用性を示すことができた.これらの成果は国内学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目に認知症傾向有無間で有意な差の認められた「係り受け距離」を用いることで,認知症傾向検出精度(Accuracy)90.9%を得ることができた.従来用いられてきた語彙に関する特徴量と比較し,検出精度が16.9%向上した.特に,認知症疑いのある高齢者音声を「傾向あり」と正しく判定した感度(sensitivity)が92.0%であり,従来よりも12.0%向上した.このことより,認知症傾向ありを無しと誤判別する数を軽減させることができた. 4年目は本研究の最終到達点として,認知症傾向の識別器を構築し,その識別精度を向上させることを目的としていたため,上記結果よりおおむね計画通りに進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では,対話音声から認知症傾向を識別することを目的とし,識別モデルを構築し,精度向上を達成した.しかし,感度92.0%,特異度89.5%であるため,識別モデルを改良する必要がある.そのため,自然言語処理で汎化能力の高さから用いられる,BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を中心に複数の識別器を用いることで,認知症傾向識別の精緻化を目指す.
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