研究課題/領域番号 |
19K12216
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 (2021-2022) 東京工業大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
小宮 健 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 研究員 (20396790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DNAコンピューティング / DNAナノマシン / 分子ロボティクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、所望の性能を示すナノマシンを定量的に設計して構築する手法の確立を目的として、複数の安定状態を考慮したモデルを用いて設計を行い、実際にナノマシンを構築して動作を検証する。DNAの結合を競合させるという独自の着想にもとづいて、これまで検証されてこなかった「最安定ではない構造をどのように取り扱うべきか?」という問いに取り組む。三年間の研究期間において複数のDNAナノマシンを設計し、各ナノマシンが設計通りの動作特性を示すかを実験で検証して、構築手法の有効性を実証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、機能性分子システムを実現するために、実世界で動作するDNAナノマシンの構築手法を確立することに取り組んでいる。研究代表者らがこれまで行ってきた、DNAの構造形成挙動を予測するシミュレーションと生化学的な実験を併用して反応を定量的に評価・検証し、その結果にもとづいて最適な配列を設計するアプローチによって、高い設計精度で所望の動作特性を示すDNAナノマシンを構築する。三年間の研究計画を四年間に延長した四年度目にあたる今年度は、DNAポリメラーゼによる伸長反応で情報処理機能を示す分子システムを構成するDNAナノマシンについて、昨年度に改変した反応機構を検証して高効率な動作を達成するための生化学的な実験を行った。実験では蛍光プローブを用いた電気泳動結果の計測等により結果を定量的に評価し、各段階の反応効率を詳細に検証した。そこで得た知見から、二次構造を多段階に形成・変化させる反応で動作するDNAナノマシンについて、最適な反応条件などを決定するためには、簡便な操作で効率良くDNAナノマシンを調整できる手法を開発して、実験のスループットを高める必要性が示唆された。そこで、調整時に行う反応を改変して従来手法との比較検証を行ったところ、操作の簡便性および反応効率ともに改善すると思われる予備的な成果を得た。改変した調整手法について今後さらに検討することで、ハイスループットにDNAナノマシンの検証実験を実施して高い反応効率を実現し、情報処理機能を示す分子システムの多段階動作を達成する。上記のDNAナノマシンとともに分子システムを構成するポリメラーゼを用いた反応についても検証を行い、その成果に関して複数の学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実世界で動作するDNAナノマシンの構築手法を確立するためには、DNAナノマシンが設計した通りの動作特性を示したかどうかを定量的に検証し、その結果をフィードバックしてDNAナノマシンを再設計するサイクルを繰り返し、ハイスループットに実験を行う必要がある。特に、DNA分子のみの反応が比較的モデル予測の通りに振る舞うのに比べて、酵素反応を組み合わせた生化学的な反応系では予期しない多様な副反応が起こるため、さらに多くの実験が必要となる。今年度は、DNAポリメラーゼを利用するDNAナノマシンが所望の温度条件下において、高効率に動作可能であるかを検証するなかで、DNAナノマシンの反応そのものよりも、DNAナノマシンを調整する手法の操作の煩雑さや反応効率の低さが、本研究課題の目標を達成する上で問題となることが示唆された。従来の分子生物学的な手法よりも簡便かつ効率良く調整が行える手法が必要となったため、新規な調整手法の開発に時間を要した。DNAナノテクノロジーの反応を導入した新規な反応について、蛍光プローブを用いた計測等を行って定量的に評価し、操作の簡便性および反応効率ともに改善がみられた。DNAナノマシンの調整に用いる反応の性能を高めることは、当初の計画や、より高い情報処理能力の実現などに必須であるため、今年度は調整手法の検討を進めた結果としてやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はDNAナノマシンの動作を検証する生化学実験を行うなかで、適切なDNAナノマシン配列の設計と反応条件の最適化を達成するためにはハイスループットに検証を行うことが必要であるが、現状の調整手法では煩雑かつ効率が低いために、本研究課題の期間内に目標の達成が困難である可能性が示唆された。そこで調整手法の改良に取り組み、新規な反応を考案して操作の簡便性および反応効率を改善することができた。この新規な調整手法の性能をさらに高めつつ活用することで、次年度にはDNAナノマシンがより多段階の動作を行える反応条件の最適化を実施して、酵素反応を制御する知的デバイスへとしての動作を実現する。また、反応系が持つ情報処理能力などにも着目して、当初計画で想定していた温度バンドパスフィルタ特性以外にも、より重要度の高い特性や機能を示すDNAナノマシンの実装を検討する。定量的なモデル予測の知見を活用して新規な動作機構や反応系を考案し、高度な動作特性や有用な機能を示すDNAナノマシンを構築して、蛍光測定や酵素反応実験でその挙動を定量的に検証することで、最終目標であるナノマシンどうしが協調的に動作して分子輸送などを実行する機能性分子システムの実現が期待できる。要素反応の高効率化や各要素の調整手法、システム全体の動作の整合性をとりながら研究を推進し、適切な温度条件下で効率的に二次構造が形成・変化する設計により、所望の動作特性・効率を示すDNAナノマシンで構成された機能性分子システムを創製する。
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