研究課題/領域番号 |
19K12457
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
本藤 祐樹 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (90371210)
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研究分担者 |
青木 一益 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (60397164)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ナラティブ / ナッジ / 心理的近接性 / 二重過程理論 / 環境配慮行動 / 政策受容性 / 地球温暖化 / 再生可能エネルギー / 意思決定 / 心理的距離 / 省エネルギー / 省エネルギー行動 / 情報提供 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、人々が持つ異なる認知・思考モード(=情報処理ルート)に着眼して、省エネルギー行動を効果的に促進する情報提供のあり方を明らかにすることである。人々は外部から得た情報を「自動的に直感的に」処理するモードと、「じっくり論理的に」処理するモードを持っている。1970年代から省エネ行動促進に向けた情報提供について数多くの研究がなされてきたが、暗黙に「じっくり論理的な」認知・思考モードを前提としてきた。本研究では、この前提が、情報提供が十分な行動変化をもたらさない一因であると考え、両モードの違いを十分に意識した情報提供の方法を検討する。
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研究実績の概要 |
人々の省エネルギー行動を促したり、再生可能エネルギー導入など政策への人々の関与を高めたりするためには、それらの意思決定に資する情報の提供が重要であるとされてきた。しかし、情報提供は必ずしも人々の意思決定や行動の変化に結び付いてはいないようである。本研究課題では、人々が情報を処理するルート、言い換えれば認知し思考するルートの違いに着目して、効果的な情報提供のあり方について明らかにすることを目的としている。 本年度(2022年度)においては、第一に、エネルギーコミュニケーションにおけるナラティブ情報の効果を検証するための介入実験の結果を論文としてまとめ公表した。ナラティブ情報は、ロジカル情報と比較して、不安や恐怖といった感情をより強く喚起し、気候変動緩和に向けた行動意図や政策受容性をより高める傾向があることが認められた。また、この傾向は、地球温暖化に関心が低い参加者ほど顕著であることが確認された。 第二に、上述の説得的コミュニケーション以外にナラティブ情報を活用できる可能性について、脱炭素地域づくりのナラティブ・ワークショップの実施を通して検討した。その結果、自由な発想や多様な価値観に基づくシナリオ作成においてナラティブ情報が効果的に作用することを明らかにし、ナラティブ情報の新しい活用方法(創造的コミュニケーション)を示した。 第三に、エネルギーコミュニケーションにおける感情の役割に着目し、風力発電技術と地域愛着の関係に関する質問紙調査を設計・実施した。質問紙調査から得られたデータを分析した結果、風力発電の存在が人々の地域愛着を向上させる可能性とそのメカニズムについて明らかにした。その上で、風力発電が持つ技術特性が人々の考えや行動に影響を与えるという可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、心理学、社会学、政治学、経営学、環境学などの分野における広義のナラティブ情報に関連する既往研究を横断的にレビューし、エネルギー・環境分野におけるナラティブ情報の活用可能性について明らかにした。広義のナラティブ情報を横断的にレビューしたものは過去に見当たらず、新たな知見を提供できたと考えられる。 第二に、エネルギーコミュニケーションにおいて、個々人の行動促進(説得的コミュニケーション)ならびに社会的な議論への関与の向上(創造的コミュニケーション)という二つの点において、ナラティブ情報が効果的である可能性について明らかにした。エネルギー・環境分野における二重過程理論に立脚した情報提供やコミュニケーションに関する研究の発展に寄与するものと考えられる。 第三に、感情成分の可能性に着目して、風力発電技術と地域愛着の関係に関する追加的な分析を実施し、風力発電の存在が地域愛着を向上させる可能性を明らかにした。これは、通常考えられている「ひと」と「ひと」の間のコミュニケーションではなく、「もの」と「ひと」の間のコミュニケーションの可能性に着眼した取り組みであり、エネルギーコミュニケーション研究の新たな発展可能性を示したと考えられる。 以上、コロナ禍の影響などもあり、当初計画よりも多少の遅れはあるものの、計画を上回る新たな展開もあり、全体として研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2022年度)までに得られた結果に基づき、ナラティブ情報の創造的コミュニケーションへの活用可能性などについて論文として取りまとめる予定である。また、これまでに得られた結果に基づき、エネルギーコミュニケーションという概念について再整理するとともに、現実社会における有効なエネルギーコミュニケーションについて検討する予定である。
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