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「研究と教育」から見た量子統計力学の形成過程の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K13045
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
研究機関明治大学

研究代表者

稲葉 肇  明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (00793093)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
研究課題ステータス 交付 (2021年度)
配分額 *注記
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード統計力学 / 科学史 / フォン・ノイマン / トルマン / プランク / 状態和 / ダーウィン / ファウラー / 分配関数 / アインシュタイン / 原子論 / 物理学史
研究開始時の研究の概要

本研究は,近年の科学史研究で中心的なテーマである研究と教育の相互作用を,量子統計力学と呼ばれる物理学の一分野の歴史を検討することで例示するものである.とくに,教科書という媒体を,理論体系の変化とその普及をあらわす歴史的対象として重視する.その際,状態和と呼ばれる計算テクニックの導入による教科書の変化を中心的に検討する.これにより,量子統計力学の理論体系の形成過程の記述を与えるとともに,教科書の執筆が知識体系の変化をともなうきわめて創造的な営みであったこと,また教科書が学生のみならず専門家にとっても有用なリソースであったことを示す.

研究実績の概要

本年度は,当初の研究計画に従い,トルマン『統計力学の諸原理』(1938),ランダウ=リフシッツ『統計物理学』(1938),スレーター『化学物理学入門』(1939)などを読み直すことで,量子統計力学が1930年代の教科書でどのように定式化されているかを検討した.前年度に検討したフォン・ノイマン『量子力学の数学的基礎』(1932)の内容と合わせることで,この時期の量子統計力学においてもアンサンブル概念が主軸となっており,この体系に分配関数(状態和)が主要な計算テクニックとして組込まれたことを確認した.トルマン『統計力学の諸原理』についてはその書評も検討し,当時の物理学界にこの本がどのように受容されたのかも検討した.こうした教科書が執筆されたことは,この時期に量子統計力学がひとまずの完成をみたことを示唆すると考えられる.また,統計力学の歴史における教育の側面に関し,当時のベルリン大学哲学部の講義目録を調査した.その長期的な傾向については,日本物理学会第77回年次大会で報告した.

なお本研究課題は,量子統計力学の形成過程が主たる対象であるが,研究代表者のこれまでの研究成果を総合して,19世紀中葉のマクスウェルによる気体運動論から,1938年のトルマン『統計力学の諸原理』に到る統計力学の形成史を『統計力学の形成』(名古屋大学出版会,2021年)として公刊した.全7章のうち,第5章「古典統計力学の諸相」の一部,第6章「状態和と分配関数」と第7章「量子統計の時代におけるアンサンブル」のすべてが本研究課題によるものである.とくに,アンサンブル概念にもとづいた統計力学が,便利な計算手法として,物理学の研究論文にも教科書にも浸透していく様子を強調した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

論文や教科書などの公刊物の調査はすでに終えたと言ってよい.残るは未公刊資料である.Archive for the History of Quantum Physics の調査は,これを所蔵している国立国会図書館の利用制限により,進んでいないのが現状である.また,カリフォルニア工科大学所蔵のトルマンの講義ノートや,ブールハーヴェ王立博物館所蔵のエーレンフェスト宛書簡については,新型コロナウイルス感染症にともなう渡航制限により,調査ができなかった.この状況は当分続くと考えられるが,『統計力学の形成』を上梓したことなどから,本研究課題の進展は,全体としてはおおむね順調であると言える.

今後の研究の推進方策

カリフォルニア工科大学所蔵のトルマンの講義ノートや,ブールハーヴェ王立博物館所蔵のエーレンフェスト宛書簡といった未公刊資料の調査が残っている.新型コロナウイルス感染症の流行状況次第であるが,翌年度に実施すべく,当初の研究期間を延長した.調査が実施できた場合には,その結果を踏まえて,量子統計力学における教育と研究の相互作用についての論文を執筆することを考えている.

報告書

(3件)
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書

研究成果

(8件)

すべて 2022 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] マクスウェルの統計的知識と自由意志2020

    • 著者名/発表者名
      稲葉肇
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 48 ページ: 164-174

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] いかにしてアインシュタインは原子論に到ったか2019

    • 著者名/発表者名
      稲葉肇
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 47 ページ: 157-169

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] ベルリン大学講義目録における物理学関連科目:創設から第二次世界大戦まで2022

    • 著者名/発表者名
      稲葉肇
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 統計力学の基礎をめぐる力学的アプローチと統計的アプローチ2020

    • 著者名/発表者名
      稲葉肇
    • 学会等名
      哲学オンラインセミナー
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] The Tool of Sum-over-states: Research and Pedagogy in Quantum Statistical Mechanics, 1902-19442019

    • 著者名/発表者名
      Hajime Inaba
    • 学会等名
      1st Conference of the International Academy of the History of Science
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [図書] 統計力学の形成2021

    • 著者名/発表者名
      稲葉 肇
    • 総ページ数
      378
    • 出版者
      名古屋大学出版会
    • ISBN
      9784815810368
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] 科学史事典(項目「熱力学,統計力学:不可逆な世界」を担当)2021

    • 著者名/発表者名
      日本科学史学会
    • 総ページ数
      758
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621306062
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] ドイツ文化事典(項目「アインシュタイン」「物理学」を担当)2020

    • 著者名/発表者名
      石田 勇治、佐藤 公紀、柳原 伸洋、宮崎 麻子、木村 洋平
    • 総ページ数
      744
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621305645
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2022-12-28  

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