研究課題/領域番号 |
19K13152
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
有田 豊 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (30771943)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヴァルド派 / キリスト教 / 教理書 / 中世写本 / ロマンス語文献学 |
研究開始時の研究の概要 |
「原プロテスタント」や「宗教改革の母」と評される、12世紀に創設されたキリスト教の一派・ヴァルド派は、中世期(12-15世紀)においていかなる教理を有していたのか。この問題について、先行研究ではカトリック教会が残した文書を根拠として彼らの教理が明らかにされる傾向があり、中世の段階でヴァルド派が残した文書は、ほとんど分析対象とされてこなかった。そこで本研究では、現存する中世ヴァルド派文書約180編のうち、彼らの教理が記されていると思しき「8本の詩編」を解読/分析し、詩を通して表出される中世ヴァルド派の教理の解明と体系化を試みる。
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研究実績の概要 |
2021年度の研究計画としては、①4本の詩の解読と分析、②中世ヴァルド派思想の俯瞰、左記の2つを進めていくことを目標としていた。 ①の実績としては、『現世の蔑視』Lo Despreczi del Mont、『永遠なる父』Lo Peyre Eternel、『新たなる救慰』Lo Novel Confort、『新たなる説教』Lo Novel Sermon の4本の詩を解読し、一通りの翻訳文を作成することができた。『現世の蔑視』は、永遠の罰への不安の中で、生命の儚さ、虚栄の善行、悔悛の必要性などについて述べている。『永遠なる父』は、3行からなる3つのグループによって構成される連祷で、各グループは三位一体それぞれのペルソナ(父と子と聖霊)に捧げられている。『新たなる救慰』は、現世を離れ、不安と共に懊悩に耐え忍びながら、神に仕えることへの奨励を説いている。『新たなる説教』は、現世とそこにある歓びから離れることの奨励と、地獄に堕ちた者たちの巡りあわせを描いている。これをもって、過去2年間に解読した4本の詩と合わせ、分析対象となる8本全ての詩の解読が完了したことになる。 ②の実績としては、『崇高なる読誦』におけるヴァルド派の精神世界について分析した成果を、西洋中世学会における「異端」をテーマとしたシンポジウムにて発表した。なお、2021年度中に出版予定だった、中世ヴァルド派が有していた教理はいかなるものだったのかを明らかにした論文は未だ印刷中での状態であり、早ければ2022年度内に出版される見込みである。また、2本目の詩『舟』La Barca の翻訳が完成したため、こちらも2022年度内に出版される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として、2021年度の研究計画に含まれている2点――①4本の詩の解読と分析、②中世ヴァルド派思想の俯瞰――のうち、①は概ね順調に進んでいるが、②の方に若干の遅れがみられる。 ①については、分析対象となる全ての詩の解読が終わり、現在は具体的な内容分析を進めている段階にある(当初は研究期間冒頭の2年以内に全ての解読を済ませる予定だったが、1年遅れでの読了である)。ただ、各種社会情勢の影響を受けて、未だに海外調査に行くことができておらず、写本と照らし合わせた分析作業に取り掛かることができないのが残念ではある。 ②については、当初の計画に比べると、約1年分の時間的遅延が発生している。ただ、詩編本文の解読が済んだことで、ようやく全体を通しての包括的な分析に取り掛かる準備ができた段階にあるため、残りの研究期間では思想の分析と解明に集中できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、詩編の解読が全て完了したので、中世ヴァルド派思想の体系化を目指して研究を進めていく予定である。 これまでの解読作業を通して8本の詩に共通する特徴が明らかになってきたため、残りの研究期間では、詩における特徴を踏まえつつ、教理面に着目した分析を行い、それぞれの詩から読み取れる中世ヴァルド派の思想や教理を明らかにしていく。そして、本研究の最終段階である「先行研究と詩編の解読結果を合わせた中世ヴァルド派思想の体系化」を目指していく。 本研究の遂行においては、2022年度内に写本の海外調査に赴くことができるかどうかが、研究の精度を左右する要素となっている。そのため、可能な限り、年度内に海外調査に赴くための方法を模索していくつもりである。
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