研究課題
若手研究
本研究では、移行期の中国国有企業における雇用管理の内面的な構造やメカニズムの転換、及びそのインパクトを解明し、国有企業雇用での真の特質をつかむ。また、本研究は実証研究を目指すため、現地調査・検討の際にして、企業の制度や現地政府の政策面のみならず、労働現場での実情、改革・管理制度の実効性についても重点的に考察する。
本研究では、主に中国国有企業における雇用改革及びそれによる労使関係の展開について実態調査・研究を行った。新型コロナ感染拡大によって本研究のフィールド調査に大きな支障が出ているが、限られた調査データにより、現今の国有企業の中では、国家ガバナンス、市場メカニズム、及び社内「民主的管理」という3つの要素が併存する重層的な雇用システムが構築されつつある。また、最大の特徴として、社内「民主的管理」の実施は、企業「市場化」改革による経営者の権限や優位性の一方的な拡大、及び労使関係の不均衡を緩和・調整し、一般労働者の地位向上にも緊密につながっていることが分かった。
本研究では、主にフィールド調査を通じて、公刊資料では伺い知ることのできない中国国有企業の雇用システムの実態及びその特徴を検討した。また調査現地では、最新のコロナ禍の労働実態を観察し、従来の中国雇用改革に対する労働者の評価や考え方も考察した。こうした議論は、中国労働改革の内実及びそのインパクトの一端を捉える上では有益な研究成果であり、中国労働実態を広く検討するための斬新な着目点や現地適合的な議論の枠組みを提示した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件)
Discussion Paper, Graduate School of Economics and Business Administration, Hokkaido University.
巻: Series B, No.2020-183 ページ: 1-10