研究課題/領域番号 |
19K14551
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
武石 拓也 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 助教 (20784490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 作用素環論 / 代数体 / グラフC*-環 / KMS状態 / K-理論 |
研究開始時の研究の概要 |
作用素環論は関数解析の一分野に位置づけられるが,幅広い数学の分野と接点を持つ分野である.群や力学系など様々な数学的対象に対して,付随する作用素環を定義することによって,特有の関数解析的手法を応用することが可能になっている.本研究は代数体に付随する作用素環についての研究である.作用素環が代数体の情報をどのように反映しているかについて詳しく調べることが研究の主な目的である.
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研究実績の概要 |
Bost--Connes系に端を発する数論由来のC*-環を本研究では扱っている.昨年3月に発表した論文(C. Bruceと共著)では,代数体の乗法群の有限アデール環への作用から接合積C*-環を構成し,そのC*-環はもとの代数体を完全に憶えている,という剛性定理を証明した.このC*-環はArledge--Laca--Raeburnが扱ったことのあるC*-環であり,非常に単純な構成法で得られるものであったが,剛性定理が示されたことで研究する価値のあるC*-環であることが分かったと言える. Bost--Connes 系や半群C*-環からこのC*-環に至るまで,数論由来のC*-環は,そのほとんどが有限アデール環やそれに近い対象から構成されている.有限アデール環を全アデール環に置き換えたらどうなるのか,というのは非常に自然な疑問である.9月に発表した論文(C. Bruceと共著)ではこの問題を扱っている.結論としては,代数体の乗法群の全アデール環への作用から接合積C*-環を構成してもなお,そのC*-環はもとの代数体を完全に憶えているという,全く同じ形の剛性定理が成り立つ.このC*-環の原始イデアル空間はもとの代数体の素点全体と自然な対応関係を持つが,原始イデアル空間の位相構造が面白く,素点全体の冪集合とイデール類群が奇妙なくっつき方をした形をしている.原始イデアル空間の決定は9月の論文の1つ目の主定理であり,Laca--Raeburnの結果の一般化である.2つ目の主定理では,素点が実であるか,虚であるか,有限であるかを,作用素環的K-理論のある境界準同型の全射性・単射性による特徴付けを与えている.この2つの主定理の帰結として,昨年3月の論文に帰着する形で剛性定理が示される. その他,一昨年度および昨年度に発表したグラフ環のKMS状態に関する2本の論文(一昨年度のものはC.Bruceと共著,昨年度のものは単著)はどちらもJ. Operator Theoryにアクセプトされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は一本論文を発表したので,順調に推移していると言える.10月から11月にかけてグラスゴーに研究打ち合わせで渡航した際に,昨年度および今年度発表した論文に関して研究発表をすることができた.また,今年3月の末には作用素環外の国際研究集会でこれらの研究結果を発表する機会が得られた.渡航に関する制限が緩和された影響で,徐々に発表の機会を回復できているといえる.しかし,4年間の全体で見た場合,コロナによる影響を完全に脱しているとは言えない.そのため,研究期間の延長をすることとした.
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今後の研究の推進方策 |
数論由来のC*-環の剛性定理について一息つきつつあるので,研究の軸足を剛性定理の先へと移すことにした.昨年3月の結果をはじめとして,数々の剛性定理の帰結として,代数体の完全不変量となるような可算離散群を作ることができる.Topological full groupという道具を使うのであるが,この不変量が非常に興味深く,昨年末から研究を始めているが,今年も引き続きこの不変量の研究に重点を置くこととする.今年1月のBruce--Liの結果により,Cuntz--Liのring C*-環という構成法からも代数体の完全不変量となるようなtopological full groupが作れることが分かった.代数体の完全不変量となるtopological full groupは私の結果からもいくつかあるが,このBruce--Liのものが最も簡単であるため,最初はこれについて研究を進めている.具体的には,groupoid homology の計算を通じて,topological full groupのgroup homologyについての性質を導出する.この際にLiによる昨年9月の結果を用いる.研究は進んでおり,あと数ヶ月以内に論文を書き上げることができると期待している.また,先程言及したLiによる昨年9月の結果は新しいテクノロジーであり,数々の応用の可能性があると考えている.この結果について深く理解して,さらなる応用を探っていくことにしたい.
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