研究課題/領域番号 |
19K14598
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
江夏 洋一 東京理科大学, 教養教育研究院北海道・長万部キャンパス教養部, 講師 (90726910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 微分方程式 / 被食者-捕食者モデル / 時間遅れ / 安定性 / 自由境界問題 / 事由境界問題 / 進行波解 / 感染症モデル |
研究開始時の研究の概要 |
数理生物モデルについて得た数学的な成果や知見を,現実にみられる生物の個体数や感染症の流行に対する予測に役立てる構えである.特に,感染症流行モデルにおいては,感染症の潜伏期間を表すタイムラグを持つ微分方程式系における平衡解の安定性や,感染個体群が時間経過にしたがって生息領域を拡げる様子を表現した自由境界をもつ拡散方程式系における進行波解の存在性を調べることで,より現実的な環境条件を考慮した感染症の流行動態の理解に応用したい.
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研究実績の概要 |
本年度では,下記の研究を行った。
1.被食者-捕食者モデル...捕食者間の相互協力による採餌の円滑化を考慮した,一捕食者あたりの捕食量が被食者数および捕食者数の双方に依存するような被食者-捕食者モデルの解の漸近挙動について研究を行った.昨年度においては,捕食項が Holling I 型である場合を考え,モデルの共存平衡点の存在個数が変化する際に,共存平衡点がサドルノード分岐を引き起こすような協力係数と環境収容定数の組を具体的に与えることができた.当該年度においては,捕食者の餌の捜索時間といった,捕食行為までにかかる時間(handling time)を含めた形で,捕食項が Holling II 型である場合を考えた.そのようなモデルにおいても,捕食項が Holling I 型である場合と同様に,平衡点の存在個数の完全な分類に成功した.また,モデルのSaddle-node 分岐,transcritical 分岐,Hopf 分岐などに関する解析も,数値計算を活用しながら行った(本成果をまとめた論文は,査読付き国際誌へ投稿し,査読中である).
2.感染症の流行を記述した自由境界をもつ拡散型感染症モデル...本モデルにおける半空間を伝播する進行波解の存在・非存在や,進行波解が存在する場合の解の伝播速度に関する研究も進めている.当該年度においては,感受性個体群と感染個体群双方の空間拡散を考慮した場合の進行波の存在・非存在の解析を継続し,自由境界をもたない拡散型モデルでの不動点定理による存在性証明の応用可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
捕食者間の協力作用を考慮した被食者-捕食者モデルにおいては,Holling I 型に限定した場合の平衡点の存在個数や安定性に関する分岐構造の解析を,Holling II 型のモデルへの解析に応用できた.感染症の流行を記述した自由境界をもつ拡散型感染症モデルにおいても,研究当初から続けている数値計算で解析の見通しを立てながら,自由境界をもたない拡散型モデルでの不動点定理による進行波の存在性証明などの先行研究での解析手法の応用可能性を精査できた. 以上の点で,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
捕食者間の協力作用を考慮した被食者-捕食者モデルにおいては,捕食項が Holling I 型や Holling II 型のいずれにおいても,時間遅れを含めた場合の解の漸近挙動を詳しく調べたい.そのために,平衡点周りの線形化,Lyapunov 汎関数の構成,安定性に関する分岐構造を得るための解析方法を引き続き模索したい.感染症の流行を記述した自由境界をもつ拡散型感染症モデルにおいては,感受性個体群と感染個体群双方の空間拡散を考慮した場合の進行波の存在・非存在を調べるために,微分方程式におけるシューティング法や不動点定理以外の解析手法を今後も探る.
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