研究課題
若手研究
宇宙空間への大気散逸は、過去から現在への火星の気候変動において主要な役割を果たしたと考えられている。火星の大気が過去から現在にかけてどの程度失われたかを推定するには、複数ある大気散逸機構のそれぞれについて詳細な物理機構を理解することが重要である。本研究では、有力なイオン加速機構である磁気リコネクションに着目し、火星探査機MAVENの観測データの解析から、磁気リコネクションが火星イオン流出において果たす役割を解明する。
本研究では、火星電離大気からのイオン流出を駆動するイオン加速過程として磁気リコネクション(磁気再結合)に着目し、火星周回探査機が火星圏において長期間蓄積してきた観測データを活用することで、火星イオン流出において磁気再結合が果たす役割を調べた。その結果、(i)磁気再結合が火星周辺空間の広範囲な領域で発生し得ること、(ii)非定常磁気再結合が火星地殻残留磁化上空で頻発していること、(iii)リコネクションジェットによる瞬時イオン散逸率は他のバルク散逸機構と同程度に達するが、時間平均すると全体の総イオン散逸率への直接的な寄与は小さいことが明らかになった。
過去研究では火星周辺空間における磁気再結合の発生条件や空間分布が不明であったが、本研究の結果を総合すると、火星圏は磁力線形状が常に時間変化し続けるダイナミックな電磁環境であることが示唆された。これは、近年広域撮像画像が取得可能になり急速に研究が発展している、火星ディスクリートオーロラ観測の結果が指し示す描像と合致する。本研究の結果から得られる知見は、今後進展が期待される火星圏多点観測や複数ミッション観測データの複合解析に応用できるという点で重要な成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
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