研究課題
若手研究
金星は地球の双子星だが全く異なる気候進化を遂げた.その大きな要因である厚い硫酸雲を探査機と地上望遠鏡から観測的に調べる.研究は3つの小課題に分けて実施する.まず,探査機「あかつき」の2μmカメラ画像から雲の高度や厚みの緯度及び地方時依存性を明らかにする.また雲構造を変化させる大気運動を調べるため,鉛直運動の指標となる一酸化炭素分布を推定し雲追跡手法で得られる水平風との関係を調査する.さらに,地上望遠鏡を用いた近赤外高分散分光観測から雲形成や大気運動の指標となる微量大気の時空間変動を調べる.研究成果は大気大循環モデルやデータ同化手法による大気現象の再現や気候システムの解明に必要な制約情報となる.
金星全球を覆う光学的に厚い硫酸雲の時空間変動を,探査機「あかつき」と地上望遠鏡「IRTF」を用いて観測的に調査した.「あかつき」の近赤外画像から導出した雲頂高度は赤道対称構造であり,低緯度では比較的一定だが高緯度になるに従い下降する事が分かった.過去の探査機観測の結果を踏まえると,雲頂高度分布は約10年近く安定している事を突き止めた.「あかつき」が発見した山岳波に起因した定在構造は,雲頂高度にして数百m程度の高度差として表れることを初めて定量的に示した.「IRTF」の近赤外高分散分光装置で取得したCO2吸収線から導出した雲頂高度分布は,「あかつき」で得られた分布を定性的に支持する結果であった.
全球を覆う光学的に厚い硫酸雲は金星全体の熱収支を支配しており,この振る舞いが金星の気候進化に大きく影響してきたと考えられる.従って,雲層構造の空間分布とその時間変動の理解は,金星の気候システムを解明する上で重要な基礎情報となる.本研究では,欧州探査機Venus Express以降では唯一となる雲層の詳細観測を実施した探査機「あかつき」と地上望遠鏡による観測データを用いて,雲頂高度分布と山岳波に起因した定在構造を含む微細構造について新たな知見を得た.これらは大気大循環モデルやデータ同化手法による大気現象の再現や気候システムの解明に必要な制約情報となった.
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