研究課題
若手研究
本研究で、非配位性アニオン性官能基を配位子にぶら下げることで 、カチオン性錯体の総電荷を中性化し、錯体分子の集積を促進する手法を提案する。この立証のため、非配位性アニオン性官能基を有する配位子を合成し、申請者がこれまで研究を進めて来た二核ニッケル錯体を触媒とするベンゼン水酸化反応を中心として、合成した錯体の触媒活性を検討する。また、錯体の乖離平衡定数や、種々の分光学特性、酸化還元電位等の基礎化学的なパラメータに錯体の電荷があたえる影響について定量化し、それらパラメータと触媒活性との相関について考察する。
二核ニッケル(III)ビスミューオキシド錯体を低温(マイナス80℃)条件下で発生させ、その溶液に種々のカルボキシラートを加えると錯形成が進行することを種々の分光によって確認した。またこれにより、酸化活性が10倍程度向上することを見出した。研究計画当初に予定していた、ニッケル錯体触媒によるベンゼンの水酸化反応の回転頻度にアニオンが与える効果については明らかにすることはできなかったが、アニオンが二核錯体の電子状態に著しい影響を与えることが明らかになり、今後の触媒改良に向けた指針を得ることができた。
本テーマで研究対象とした二核高原子価金属ビスミューオキシド種は高い酸化力を持ち、種々の酸化プロセスで酸化活性種として機能している可能性のある化学種である。しかしこの化学種は、安定性が極めて低いため、その物理化学的性質や反応性の詳細はわからないところが多い。低温条件でこの化学種を補足することで新たに明らかになった、二核高原子価金属ビスミューオキシド種の化学的な挙動についての情報は、将来的により効率のよい触媒反応系の構築に資する可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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