研究課題
若手研究
食肉の質の向上には、骨格筋細胞の筋線維型を制御する必要がある。一般的に、筋線維型は運動神経の支配下にあると考えられてきた。しかし申請者らは、遅筋または速筋に局在する筋幹細胞(衛星細胞)は新生筋線維を形成する過程において、それぞれで自律的に筋線維型を初期決定できるシステムを見出した。この応用により、容易に筋線維型を変換する新技術開発に繋がることが期待されるが、同時に分子メカニズムの理解が不可欠である。そこで本研究では、①各筋線維型にオリジナルな衛星細胞の特定とその動態の観察、および②筋組織内の環境が衛星細胞に特異性を与える機序に着目したアプローチを展開し、基礎的知見の捻出を目的としている。
研究者らは、遅筋または速筋由来の筋幹細胞(衛星細胞)が融合して新生筋線維(筋管)を形成する過程で、それぞれ多機能性細胞制御因子semaphorin 3Aまたはnetrin-1を合成して自律的に筋タイプを決定する分子メカニズムの解明を目指している。本研究では、衛星細胞が局在する筋タイプに応じて特性が保持されている可能性と、衛星細胞を取り巻く細胞外環境から受ける物理的刺激による特性獲得の2パターンからアプローチした。その結果、物理刺激(細胞接着面の弾性率)の影響による特性獲得の可能性は低く、衛星細胞が局在していた筋線維の筋タイプに応じて特性を保持するメカニズムの存在が示唆された。
食肉の質を向上させるためには、骨格筋の筋タイプ(遅筋型および速筋型で大別される)を制御する生産方法の開発が求められる。これまでに、筋タイプは成熟した筋線維に接着する運動神経刺激の支配下にあると考えられてきたが、各筋タイプ特異的な筋線維に局在する衛星細胞は自律的に筋管の筋タイプを制御する能力を有することが明らかとなっている。本機構は物理的刺激などの外的要因を受けずに維持される可能性があるため、それぞれの筋タイプに特異的な衛星細胞をターゲットとした筋肥大誘導技術開発によって、容易に筋タイプを変換する新技術開発に繋がることが期待される。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 4件) 備考 (2件)
The Journal of Biochemistry
巻: 169 号: 1 ページ: 107-117
10.1093/jb/mvab030
40022721825
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 525 号: 2 ページ: 406-411
10.1016/j.bbrc.2020.02.099
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K007667/
http://lab.agr.hokudai.ac.jp/cell_tissue_biology/?page_id=92