研究課題
若手研究
本研究は、屋久島から下北半島に至る広範な環境に分布するニホンザルを対象に、核ゲノムの多数の遺伝マーカーを用いた解析を行い、地域集団間の遺伝的交流を含めた集団史と系統を高解像度に推定する。また、集団史と系統の影響を考慮に入れることで、頭蓋の形態に見られる地理的変異の再評価を行い、その形成に自然選択が働いた可能性を検証する。さらに、ゲノムワイド環境関連解析と外れ値検定により、寒冷地への進出に伴った適応遺伝子候補を検出する。
本研究は、ニホンザルにおける遺伝的地理的多様性とその形成プロセスを推定した。ニホンザルは、中国のアカゲザル、インドのアカゲザル、タイワンザルのクレードと姉妹関係にあることが示された。ニホンザル種内では、中部地方を境界として北東と南西のグループに別れること、それらの間に遺伝子流動があったことが示唆された。最終氷期最盛期には、日本列島の南岸の限られた地域(レフュジア)に分布していた可能性が高い。ニホンザルの系統地理的多様性は、主に、氷期のレフュジアへの隔離に伴う東北-南西分岐とその後の集団間遺伝子流動によって形成されたと考えられる。
高い地域多様性と固有性を併せ持つ日本列島の動植物は、生物地理学的に重要な研究対象として世界的に注目を集め、これまでにも多くの知見が蓄積されてきたが、比較的短期間に起こったとされる地域集団間の分岐と交流、日本列島の多様な環境に対する適応進化のプロセスについては、十分に理解されていなかった。本研究の成果は、日本列島における動物の地理的多様性の形成過程に関する理解の一助となるとともに、ニホンザルの地域集団の保全にも役立つことが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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