研究課題/領域番号 |
19K16340
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
植村 雅子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (70511997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 白金錯体 / 細胞内蓄積量 / 抗がん剤 / 大腸がん / オキサリプラチン耐性 / トランスポーター / 細胞内蓄積 / 耐性がん / 細胞輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
部位別がん罹患者数、第一位の大腸がんの治療では、白金製剤を含む複数の薬剤を用いる多剤併用療法が実施される。しかし、白金製剤に対して耐性を示すがんの出現が治療の選択肢を狭めている。本研究で扱うテトラゾラト架橋白金(II)二核鎖体は、新奇構造を有する白金化合物である。本鎖体は、動物実験において、大腸がんに効果があることが明らかにされている。その効果には、本鎖体が、がん細胞内へ高効率に蓄積されることが寄与することが示唆されているが、その機構については明らかにされていない。本研究では、本鎖体の細胞内への蓄積に関する機構を明らかにし、白金製剤耐性がんにも有効な次世代白金製剤の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、テトラゾラト架橋白金(II)二核錯体(テトラゾラト架橋錯体)の細胞内蓄積に関与するトランスポーターを同定することで、テトラゾラト架橋錯体の作用機序の一端を解明し、大腸がん治療薬オキサリプラチンに対して耐性を示すがんにも有効なテトラゾラト架橋錯体の創出へ寄与することを目的とする。これまでに、新たに樹立したオキサリプラチン耐性ヒト大腸がん HCT116 細胞株(HCT116_R細胞)を用いて、テトラゾラト架橋錯体のリード化合物の一つである5-H-Yは、オキサリプラチンに交叉耐性を示すことを明らかにした。また、有機カチオントランスポーター(OCT)の阻害物質であるシメチジンを用いた競合阻害実験によって、テトラゾラト架橋錯体の細胞内取り込みにOCTが関与することが示唆された。 本年度は、別のOCT阻害物質tetraethylammonium (TEA)およびNa, K-ATPase阻害物質ウアバインを用いて、競合阻害実験を行った。TEA共存下では、オキサリプラチンおよび5-H-Yとも約30%細胞内蓄積量が減少した。一方、ウアバイン共存下では、オキサリプラチンの細胞内蓄積量が約10%減少したのに対して、5-H-Yでは約2倍に増加した。これらの結果から、5-H-Yの細胞内/外への輸送に、それぞれOCT/Na, K-ATPaseが関与していることが分かった。さらに、オキサリプラチン耐性がんに有効なテトラゾラト架橋錯体の探索の予備検討として、数種の5-H-Y誘導体を用いてin vitro細胞増殖抑制活性に対するTEAの影響を調べたところ、全ての誘導体において、in vitro細胞増殖抑制活性の低下が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
競合阻害実験によって、二種類のトランスポーターが、テトラゾラト架橋錯体の細胞輸送に関与していることが明らかにすることができた。ただし、当初予定していたRNAi法による確認が未実施である。トランスポーターの探索に関しては、2021年度に二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析(外部委託)も行った。2022年度は、HCT116細胞とHCT116_R細胞の間において、発現量が有意に変化していたタンパク質(1.5倍以上増加:189種、1/1.5以下に減少:33種、他3777種)の精査を進めることができたが、新たなトランスポーターを候補として挙げるには至らなかった。また、オキサリプラチン耐性がんに有効なテトラゾラト架橋錯体の探索については、HCT116_R細胞を用いてin vitro細胞増殖抑制活性を調べている最中である。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内への輸送に関与することが分かったOCTには、数種のアイソフォームが存在することが知られている。今後、realtime RT-PCR法やウェスタンブロット解析、RNAi法により、どのOCTが細胞内への輸送に最も寄与しているかについて検討する予定である。また、新たなトランスポーターの探索のため、二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析によってHCT116細胞およびHCT116_R細胞間で発現量に差が見られたタンパク質の精査も行う。さらに、一連のテトラゾラト架橋錯体の誘導体を用いて、HCT116_R細胞におけるin vitro細胞増殖抑制活性評価を行い、オキサリプラチン耐性がんにも有効なテトラゾラト架橋錯体の創出に必要な基本情報の取得を目指す。
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