研究課題
若手研究
がん領域における心機能評価は、がん治療で得られるベネフィットが心機能低下を上回ると考えられていたため、これまで考慮されてこなかった。しかしがんサバイバーの増加に伴い、心機能の低下はがん患者の著しいQOL低下を招き、生命予後を左右することから、その解決は急務となった。従って、本研究ではがん悪液質時におこる心機能障害の分子機構の解明とその治療開発について、心不全治療に使用されているアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)受容体阻害薬(ARB)とAng変換酵素阻害薬(ACEI)が新規治療法となる可能性について解析を行うことを目的とする。さらに血中AngⅡが悪液質のバイオマーカーになり得るかも併せて検討する。
本研究室ではがん悪液質モデルを確立しており、同モデルの心機能評価およびAng変換酵素阻害薬(ACEI)ならびにAngⅡ受容体拮抗薬(ARB)投与による心機能改善効果について検討した。がん悪液質モデルの心筋では悪液質の進行とともにE3ユビキチンリガーゼに属する酵素遺伝子Xの発現が上昇していることが明らかとなった。一方ACEI、ARBによる悪液質改善効果は認められなかった。遺伝子Xは骨格筋での発現上昇は認められず、加えて筋委縮との関連性は報告されていないため、おそらくがん悪液質時による心機能障害に特異的に上昇する遺伝子であると考えられる。今後遺伝子Xを介する経路についてさらに詳細な解析を行う。
ヒトに奏効する抗がん剤やがん悪液質改善薬の開発の困難さは、非臨床試験での薬効評価にあたり、単一のがん細胞に由来するがん細胞株およびがん株細胞移植動物を用いてきたことにある。これらのモデルは臨床予測が極めて低いことが指摘されており、臨床で認められるような副作用の評価は困難であり、腫瘍循環器学分野の問題解決の糸口もモデルの開発が大きく関与していると考えられる。本研究課題ではヒトと類似したがん悪液質モデルを使用し、心機能低下に遺伝子Xが関与していることを明らかにした。今後は遺伝子Xの経路をより詳細に検討し、遺伝子Xをターゲットとした治療薬の開発を目指し、がん悪液質患者のQOL向上を目指したい。
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