研究課題/領域番号 |
19K16631
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
池田 美恵 順天堂大学, 大学院医学研究科, 学振特別研究員(RPD) (40734314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アルテミシニン耐性 / マラリア原虫 / Pyknotic form / RSA / 原虫密度 / ヘマトクリット / アルテミシニン / in vitro 検査法 / ELISA / pyknotic form / Pyknotic / 熱帯熱マラリア原虫 / 薬剤耐性 / in vitro 解析 / pyknotic |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、流行地でも利用可能な新規アルテミシニン耐性検査法(qRSA)の開発を行う。特に、熱帯熱マラリア原虫では、アルテミシニンによってpyknoticとよばれる死原虫が出現する。しかし、pyknoticが耐性判定に及ぼす影響、特にしばしば混同される熱帯熱マラリア原虫の休眠体との違いいは統一された見解がない。そこで、Pyknoticの特徴をFACSを用いて明らかにする。 その後、培養株を用いたqRSAの開発を進める。FACSは流行地において実用することが困難であるため、解析法としてELISAによってマラリア生存原虫数を解析可能にする。そのため、最終的な検証をウガンダにおいて実施、有効性を確認する。
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研究実績の概要 |
本研究は、マラリア第一選択薬アルテミシニンへの耐性原虫検出法であるring-stage survival assay (RSA)法の解析方法を改良し、より簡便なin vitro耐性検査法を開発することを目的としている。 本研究開始時、RSAではアルテミシニンによって出現するpyknotic formと耐性の関連を疑っていた。これまでの解析によって、アルテミシニン耐性の有無とpyknotic formの出現頻度には相関がみられないこと、実験室での培養条件次第でpyknotic formの頻度が変わることが明らかになってきた。さらにウガンダにおいて実施したRSAの改良法であるqRSAを用いたアルテミシニン疫学調査の結果からも、サンプルのpyknotic form出現頻度は2014年頃とは変わらず、2022年サンプルのアルテミシニン耐性と感受性原虫間での頻度も大きな差は見られなかった。pyknotic formの出現頻度と耐性との関連は薄いと考えられ、pyknotic formの頻度を基に耐性の有無を判定することは困難であると結論付けた。 今年度新たに得た知見として、培養原虫を用いたpyknotic formの出現条件が分かってきた。標準株である3D7を用い、5% ソルビトール溶液での同調培養を2回繰り返し、そこから96時間経過でほぼすべての原虫をpyknotic formにすることに成功した。原虫が同調していること、原虫密度が高いことが影響していると考えられる。また、前者に比べるとさらなる検討が必要ではあるが培養条件でのヘマトクリットを上昇させることもpyknotic form形成に貢献している可能性が高い。これまで安定的にpyknotic formを得ることは難しかったが、上記の培養法を用いることで安定的な解析可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度ウガンダにおいて実施したRSAの改良法であるqRSAを用いたアルテミシニン疫学調査の結果から、ウガンダでのRSAサンプルのpyknotic formの頻度は2014年頃とは変わっておらず、またkelch13変異を持つアルテミシニン耐性原虫と感受性原虫間にも大きな差は見られなかった。この結果は、以前の培養原虫での結果と同様であり、pyknotic formの出現頻度は耐性と直接関連する表現型ではないことを示唆した。 さらに新たな知見として、pyknotic formの出現には、培養状態での原虫密度または赤血球密度が影響する可能性が示唆された。実際にマラリア原虫を同調しながら原虫密度を増やしていことpyknotic formを生成することに成功した。これまで困難であった安定的なpyknotic form解析のための新たな手法となる。
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今後の研究の推進方策 |
培養原虫を用いたpyknotic formの生成が可能となったため、この方法を用いてpyknoticの解析を行う。さらにウガンダでの疫学調査で実施するRSAの解析にmRNAを用いる計画である。pyknotic formの出現頻度はフィールドでの培養環境の影響で変化するため、DNAを用いた解析ではpyknotic formの影響を完全に除外することは難しい。そこで現地で実施したRSAサンプルを保存し、そこから抽出したmRNAでqPCRを行う。mRNAでの定量によってRSAの解析を容易にする。 また、pyknotic formとよく似た形態である休眠体(Dormant form)との差別化も解析上の重要な課題である。この差別化にもmRNAでの定量法が役立つ可能性がある。それについてウガンダサンプルを用いた検証を予定している。
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