研究課題
若手研究
本研究の目的は、MPNSTにおいて4-MUによる抗がん薬の抗腫瘍効果の増強作用について明らかにすることである。さらに、既存の抗がん薬の中から最も有望な薬剤を抽出して臨床使用に向けてのデータを蓄積することである。4-MUは利胆剤として臨床使用されており、本研究により有用なデータが得られれば早期に実現可能な治療法であると考えられる。実現可能な治療戦略の開発として本研究を行うことにより、MPNST患者の治療成績向上につなげられる。また、正常組織である細胞微小環境を制御する新規治療法の開発は、MPNSTだけでなく他のがん治療への応用も期待できる。
悪性末梢神経鞘腫瘍は高悪性度の肉腫であり、その半数は遺伝腫瘍疾患である神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)に生じる。がん治療の進歩にもかかわらず、化学療法や通常の放射線による治療効果は不十分であり、根治治療は広範切除である。さまざまな新規抗がん薬や分子標的療法・免疫療法が開発されている現在でも、悪性末梢神経鞘腫瘍に対して有効な新規薬剤は上市されていない。我々はこれまでにヒアルロン酸合成阻害剤である4-methylumbelliferone(4-MU)による抗腫瘍効果をMPNST細胞株とマウスモデルにおいて実証、報告してきた。本研究は4-MUと既存抗がん薬の抗腫瘍効果の増強作用を検討・評価して、実地臨床で実現可能な治療戦略を開発することである。研究実績として、令和元年度は主にin vitro実験を中心に進めた。ヒトMPNST細胞株を用いて、4-MU 投与下における腫瘍細胞周囲および細胞内ヒアルロン酸の評価について、細胞周囲マトリクスの可視化、細胞内/細胞周囲/培養液中のヒアルロン酸濃度測定を行った。ヒアルロン酸合成酵素1-3とヒアルロン酸受容体CD44 発現についてペルオキシダーゼ標識した抗体による細胞免疫染色とmRNA 解析にて評価した。さらに、ヒアルロン酸合成酵素1-3 とCD44 のsiRNA によるknockdown 条件下における腫瘍原性の変化を評価した。令和2年度は、樹立した細胞株について上記アッセイ、解析を行った。令和3年度は、ヒトMPNST細胞株による皮下移植マウスモデルの作製と生存解析、および移植腫瘍を用いたex vivo実験を実施した。令和4年度以降は患者から採取した腫瘍検体によるPDXマウスモデルの作製も試みるも確立されなかったため、既存のデータをまとめて論文を作成し投稿準備を進めている。
3: やや遅れている
昨年度までに得られたデータを検証、解釈して研究結果をまとめている。整合性が合わないデータについては、再実験で再現性について確認している。令和4年度はPDXマウスモデルの確立を目指したが、対象疾患の手術が自施設では実施されず組織検体が得られなかった。そのため、実験の進捗が遅れた。
現状のデータを基盤にして論文を作成する。投稿準備が整い次第、論文内容について共著者の同意、確認を得る。その後に適切なジャーナルを選定して投稿を進めていく。その際に査読者から指摘、要求された再実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (34件) (うち国際共著 1件、 査読あり 34件、 オープンアクセス 34件) 学会発表 (45件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
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