研究課題
若手研究
オートファジーは細胞内小器官などの自己構成成分を分解するシステムで、炎症性腸疾患との関連が注目されている。一方、申請者のグループは通常の経路とは全く違う、Atg5非依存的なオートファジー経路(新規オートファジー)を発見した。申請者は、様々な基質の分解シグナルであるユビキチン分子の新規オートファジーにおける役割に注目し、新規オートファジーの変調から炎症性腸疾患の発症・増悪に関与する病態メカニズムを明らかにする。
新規オートファジーは、既知のオートファジーとは全く異なる分解機構である。これに関連するユビキチンリガーゼTRIM31の腸管上皮における機能解析を行った。まず、新規オートファジーで分解される基質標識としてのユビキチンの関与と、それをオートファジーに誘導するアダプター分子候補を同定した。次に、Trim31欠損マウスにおいて、DSS腸炎が増悪することを確認した。さらに、Trim31欠損マウス小腸上皮Organoidに対するLPS刺激下で、Ikbαの分解遅延が示唆された。この経路において、Trim31でユビキチン化される新規オートファジーの分解基質の蓄積が、腸炎の病態形成に関与する可能性が考えられた。
新規オートファジーは申請者らの研究室から提唱された新しい概念であり、世界に主導的な立場で、様々な解析系やツールを用いた解析を進めている。ユビキチンを介して、新規オートファジーとその疾患における役割を解明しようとする試みは、独自のユビキチン解析と、新規オートファジー解析系を同時に有する申請者にのみ遂行可能な研究である。本研究では、新規オートファジーの基質標識としてのユビキチン化の異常が、腸管炎症に関与することを示している。今後、ユビキチン化の関与する部位を特定することで同部位をターゲットとした創薬への応用など、ベッドサイドに直結する新たな知見の提供が期待される、社会的意義の大きな成果である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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