研究課題
若手研究
現在、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対しての基礎研究や治験薬の開発が国内外を問わず行われているが、肝硬変に至った場合、その治療法は確立されていない。われわれはヒト乳歯歯髄幹細胞が産生する抗炎症・再生因子をNASHモデルに投与し、重要な免疫細胞の一つであるマクロファージを調節することで、脂肪・炎症・線維化を抑制しNASH進展を抑制することができるかどうかの検討を行う。さらにNASHの原因のひとつとされる腸内環境にも注目し、詳細なメカニズム解析を行うことで、将来の治療応用を見据えた基礎データを取得したいと考える。
ヒト乳歯歯髄幹細胞無血清培養上清(SHED-CM)には、炎症抑制や再生促進に関わる蛋白を含む多数の液性因子が含まれる。本研究では、SHED-CMをNASH肝線維化モデルマウスに投与することで、腸管上皮のtight junctionを保護し、腸管バリア機能を維持することを示した。更にin vitroでのSHED-CM処理は、Caco-2単細胞層モデルにおける腸管上皮の透過性の機能を維持することを示した。SHED-CMが、肝細胞保護作用や炎症性マクロファージ活性化抑制に加えて、腸肝相関を介してNASHモデルの線維化を抑制することを明らかにした。
アジア、欧米諸国において肥満や2型糖尿病罹患頻度の増加とともにNAFLD/NASHが急速に増加している。しかし、NAFLD/NASHが強い炎症・線維化を来した場合、根本的な治療は現在存在しない。SHED-CM による様々な動物モデルに対する抗炎症・組織再生効果は、これまでマクロファージの極性転換が主な作用点だと考えられてきたが、本研究においてNASHマウスモデルにおいてはそれに加えて腸肝相関を介して炎症・線維化を抑制することを明らかとなった。NAFLD/NASHの病態は複雑であるが、SHED-CMはNASH に対して多面的な治療効果を発揮するため、有望な治療薬となり得る可能性がある。
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Scientific Reports
巻: 11 号: 1 ページ: 18778-18778
10.1038/s41598-021-98254-8