研究課題
若手研究
心臓の虚血および虚血再灌流という病態生理下においてミトコンドリアのautophagy (mitophagy)の分子機構および生物学的意義を検討した。レポーターであるMito-Keimaを使用して高い定量性を得たこと、培養細胞でなく、心臓の病態生理下において検討したことに新規性がある。その結果、従来とは異なる分子機構が真に重要であることを解明でき、再灌流時にautophagy/mitophagyを刺激することが新規治療法の戦略となり得るかの検討が可能となった。
<背景> 絶え間なく収縮弛緩を繰り返す心臓においてATPを産生するミトコンドリアの品質管理は重要である。障害されたミトコンドリアを除去するmitophagyは主要な品質管理機構だが、心臓においては不明な点が多かった。培養細胞での過剰発現系やuncouplerを使用した研究から、Parkin-Pink1経路が分子機構として注目されたが、生体内においても重要であるか否かは見解が分かれており、心臓の病態下でmitophagyがどのような意義を持つか、どのように制御されているかは不明な点が多かった。<目的> autophagyやmitophagyは栄養飢餓で活性化し、細胞を保護する。心筋虚血の急性期においてmitophagyが心筋保護に働くか否かを明らかにし、分子機構を解明する。<方法・結果> レポーターを使用して、遺伝子改変動物の虚血心筋においてmitophagyを定量し、主要な分子機構を同定した。安静時のmitophagyは通常のautophagyに制御されるが、虚血時のそれはUlk1依存性alternative autophagyに主に制御されることを解明した。培養心筋細胞において過剰発現やノックダウンを使用しながら、分子機構の詳細を明らかにした。現在は虚血再灌流のmitophagyについて検討している。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変動物の虚血心筋においてmitophagyを定量し、主要な分子機構を同定した。培養心筋細胞において過剰発現やノックダウンを使用しながら、分子機構の詳細を明らかにできた。Ulk1によるRab9のリン酸化部位を同定し、リン酸化抵抗性Rab9を発現するノックインマウスを作成して野生型と比較した。ノックインマウスの心臓では虚血においてmitophagyが損なわれ、心筋梗塞が増大することを解明した。一方で通常のautophagyの活性は野生型と比較して不変だったことから、Ulk1によるRab9のリン酸化はmitophagyを特異的に誘導して心筋を保護する重要な機構だと考えられ、この機構を報告した(J Clin Invest. 2019 Feb 1;129(2):802-819.)。一方で、コロナ渦で米国からの遺伝子改変動物の搬入が遅れた。また、研究代表者が所属施設を移籍し、遺伝子組み換えや動物実験の再開に時間を要している。
虚血のみならず再灌流においてmitophagyが増減するのか、それはどのような分子機構で制御されるのかを検討している。現時点では、autophagyやmitophagyが再灌流において心臓を保護するか障害するかは見解が様々である(再灌流時の過剰なautophagyは細胞死を誘導し、有害だと報告がある)。再灌流時に両者を刺激する薬物を投与して、心筋梗塞の増減を評価したところ、mitophagyは心筋を保護し、過剰はautophagyは心筋を障害する結果が得られつつある。この点を再確認する。また、過剰なautophagyによる細胞死に関して、細胞死の形態や機序を検討する。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 7件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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