研究課題
若手研究
癌の微小環境は、多くの癌でその進展に大きく関わっていることが明らかになってきており、特に癌微小環境の中心的役割を果たしていると考えられる線維芽細胞が近年注目されてきている。また、バイオマーカーや細胞間の情報伝達物質として、エクソソームがという細胞外小胞体の役割が徐々にあきらかになってきており、癌の微小環境においても重要な役割を担っている可能性がある。本研究では、癌微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)由来エクソソームの役割とその機能を明らかにし、肝癌治療あるいは肝発癌予防の新たなアプローチ法を探索することを目的とする。
肝癌に対して肝切除を行った症例について、癌部(CAF)と非癌部(NF)の線維芽細胞を分離培養し、CAFとNFから抽出したエクソソームをHCC細胞株に添加したところ、CAF由来エクソソームによる刺激のほうが有意に浸潤能や遊走能を上昇させた。エクソソーム内のmiRNAについてCAFではmiR150-3pの発言が有意に低下していることが明らかとなった。miR150-3pを強制発現したエクソソームの添加により、肝癌細胞株の遊走能と浸潤能が抑制されることを確認し、エクソソームに含まれるmiR150-3pが肝癌細胞を抑制することを明らかにした。
肝癌は予後不良な悪性腫瘍の一つであり、新たな治療法の開発は急務の課題である。癌の微小環境に対する治療はまだ発展途上であり、今回の研究はその微小環境の一部である線維芽細胞の役割を明らかにした研究である。癌の治療は癌細胞に対するものがほとんどであるが、線維芽細胞という癌細胞とは異なる細胞を治療ターゲットとすることで、これまでとは異なった新たな治療戦略の発展につながると考えられる。
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European Journal of Surgical Oncology
巻: 47 号: 2 ページ: 384-393
10.1016/j.ejso.2020.08.002