研究課題/領域番号 |
19K18326
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
稲川 嵩紘 広島大学, 医療政策室, 特任助教 (30773783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | S. aureus / MRSA / MSSA / DNAシークエンス / DNA解析 / 病原因子 / ICU / Molecular type / S. aureus肺炎 / 黄色ブドウ球菌 / 肺炎 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は①黄色ブドウ球菌の重症肺炎と関連した病原因子の同定、②同定した病原因子を標的とした、黄色ブドウ球菌肺炎の新規予防・治療戦略の検討である。 研究の方法は以下の通りである。 ①臨床情報の収集、②黄色ブドウ球菌株の収集・DNAの解析、③解析データと患者情報の比較から、重症肺炎と関連した病原因子をピックアップ。④その病原因子のin vitroでの発現量をReverse Transcription Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)などで評価。⑤動物実験により病原因子の発現量と死亡率や肺の組織学的変化の関連を確認する。
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研究実績の概要 |
これまでの様々な報告や論文から、S. aureusの保有する病原因子は、遺伝子タイプ毎に規定されることが知られており、肺炎とS. aureusの関連性を調べることにおいて、本邦に存在するS. aureusの遺伝子タイプの割合と、肺炎の原因菌となったS. aureusの遺伝子タイプを比較することで、肺炎を比較的引き起こしやすい遺伝子タイプのS. aureusを同定する方針とした。ただ、現在の本邦に優位に存在する、S. aureusの遺伝子タイプの疫学的研究がほとんどなく、まずBaseとなるS. aureusの疫学的検討を行った。 そのため、広島大学病院高度救命救急センター・ICUに2017年6月1日から2019年5月31日の間に入室し、入室時に鼻腔スワブ培養を提出されている患者から検出されたS, aureusを対象に遺伝子解析を行い、当施設入院患者が保菌するS. aureusの遺伝子タイプの割合を検討した。 結果は、MSSA保菌者390人、MRSA保菌者136人、MRSA+MSSA保菌者2人であった。MRSAは入室患者の7.1%、MSSAは20.0%で保菌していた。MRSAの割合は25.7%であり、CA-MRSAは2.3%の患者が保菌していた。 初回鼻腔のMRSA118株、MSSA328株、院内獲得MRSAの35株でDNA解析を行った. MRSAはCC8(ST8)が最多であり、これまで本邦で優位株とされてきたST5-SCCmec type Ⅱから、変遷していると考えられた。CA-MRSA、HA-MRSA、ICU獲得株いずれにおいても、優位株はCC8(ST8)であり、SCCmec typeもtype Ⅳが多く、臨床的にCA-MRSA, HA-MRSAを分類する意義は乏しい可能性がある。MSSAはCC8 ,CC45,CC188で多く、MRSAに比べて多様性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
S. aureus肺炎の原因菌株を収集するより前に、S. aureusの疫学的検討を行う必要があり、そのS. aureus株の収集、保存、DNA抽出、DNA解析、また患者情報をカルテから得るにあたり多くの時間を要した。これらの菌株の収集は終了し、ゲノムシークエンスは終了し、疫学的研究はおおむね終了している。保有している病原因子と、感染の関連についての検討も進めた。 また、今年度は新型コロナウイルスの影響で、実験室の出入りの制限もあったことや、集中治療分野での診療に時間を費やしてしまい、研究に割ける時間が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
収集したS .aureusのDNA解析は終了し、ゲノムバンクに登録を行う予定である。収集したS. aureusのDNAと臨床的背景と検討することで、疫学的検討・高病原性の病原因子の検討、敗血症、敗血症性ショック、DIC、ARDS、菌血症などとの関連を検討しており、これに関して論文作成を行っていく予定であり、現在遂行中である。
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