研究課題/領域番号 |
19K18326
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
稲川 嵩紘 広島大学, 医療政策室, 特任助教 (30773783)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | S. aureus / MRSA / MSSA / DNAシークエンス / DNA解析 / 病原因子 / ICU / Molecular type |
研究実績の概要 |
これまでの様々な報告や論文から、S. aureusの保有する病原因子は、遺伝子タイプ毎に規定されることが知られており、肺炎とS. aureusの関連性を調べることにおいて、本邦に存在するS. aureusの遺伝子タイプの割合と、肺炎の原因菌となったS. aureusの遺伝子タイプを比較することで、肺炎を比較的引き起こしやすい遺伝子タイプのS. aureusを同定する方針とした。ただ、現在の本邦に優位に存在する、S. aureusの遺伝子タイプの疫学的研究がほとんどなく、まずBaseとなるS. aureusの疫学的検討を行った。 そのため、広島大学病院高度救命救急センター・ICUに2017年6月1日から2019年5月31日の間に入室し、入室時に鼻腔スワブ培養を提出されている患者から検出されたS, aureusを対象に遺伝子解析を行い、当施設入院患者が保菌するS. aureusの遺伝子タイプの割合を検討した。 結果は、MSSA保菌者390人、MRSA保菌者136人、MRSA+MSSA保菌者2人であった。MRSAは入室患者の7.1%、MSSAは20.0%で保菌していた。MRSAの割合は25.7%であり、CA-MRSAは2.3%の患者が保菌していた。 初回鼻腔のMRSA118株、MSSA328株、院内獲得MRSAの35株でDNA解析を行った. MRSAはCC8(ST8)が最多であり、これまで本邦で優位株とされてきたST5-SCCmec type Ⅱから、変遷していると考えられた。CA-MRSA、HA-MRSA、ICU獲得株いずれにおいても、優位株はCC8(ST8)であり、SCCmec typeもtype Ⅳが多く、臨床的にCA-MRSA, HA-MRSAを分類する意義は乏しい可能性がある。MSSAはCC8 ,CC45, CC188で多く、MRSAに比べて多様性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
S. aureus肺炎の原因菌株を収集するより前に、S. aureusの疫学的検討を行う必要があり、そのS. aureus株の収集、保存、DNA抽出、DNA解析、また患者情報をカルテから得るにあたり多くの時間を要した。これらの菌株の収集は終了し、ゲノムシークエンスは終了し、疫学的研究はおおむね終了している。現在は保有している病原因子と、感染の関連についての検討を行っているが、肺炎の病原因子まで検索はできていない。 また、今年度は新型コロナウイルスの影響で、実験室の出入りの制限もあったことや、集中治療分野での診療に時間を費やしてしまい、研究に割ける時間が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
収集したS .aureusのDNA解析はある程度進んでおり、検出された遺伝子タイプと保有する病原因子を臨床的背景と検討することで、高病原性の病原因子を検討している。高病原性については、臨床的に敗血症、敗血症性ショック、DIC、ARDS、菌血症などの症状を呈した症例について検討することで評価を行う。高病原性株に多い、病原因子のRNAの発現量を研究することで、病因との関連性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に行った研究で使用した実験器具、試薬などは、当施設に元々保管されていた試薬を使用しており、同年度に使用した研究費は特になく、次年度以降の研究費として使用する。2022年度はDNA解析を進めていくうえで、必要な試薬の費用や研究成果の学会発表などの旅費に研究費を用いる予定である。
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