研究課題/領域番号 |
19K18434
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂元 顕久 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30404479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 膠芽腫 / 脂質代謝 / EGFR / LSD1 / Glioblastoma / Cholesterol / エピジェネティクス / EGFRシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
膠芽腫は脳を構成する星状膠細胞などが腫瘍化したものであり、最も頻度の高い原発性悪性脳腫瘍である。膠芽腫の細胞は生存維持に必要なコレステロールを外からの供給に依存しており、この代謝系が崩れると細胞は死滅する。星状膠細胞本来の脂質代謝系は、腫瘍増殖を促進するEGFRシグナルの下流で膠芽腫特有の脂質代謝系へと再構築されるが、その過程で脂質代謝遺伝子の発現調節にエピジェネティック因子の重要性が示唆される。本研究は主にヒストン脱メチル化酵素LSD1に着目しながら、EGFRシグナルを受け脂質代謝と腫瘍増殖を制御する新規エピジェネティック因子の探索とその機能の解明、および分子標的としての有用性の評価を目的とする。
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研究成果の概要 |
膠芽腫細胞の実験から、腫瘍増殖に関わる上皮成長因子受容体(EGFR)シグナルの活性によりLSD1タンパク質が調節されることを確認した(活性化でLSD1タンパク質が増加)。同シグナルが活性化した膠芽腫細胞においてLSD1を阻害すると、細胞内のコレステロールが枯渇しやすい状態になる可能性が示唆され、その培養においてLSD1の阻害と共に脂質を含むサプリメント濃度を調整すると、低濃度ほど死滅細胞が増加した。一方、正常アストロサイトでLSD1を阻害すると、コレステロール合成系の遺伝子発現が膠芽腫細胞よりも強く誘導され、LSD1による細胞内コレステロールの消耗に対してより抵抗性を示す可能性が示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
膠芽腫は最も予後の悪いがんの一つであり、様々な治療の開発でも生存期間は中央値15ヵ月程度とあまり改善しておらず、新たな治療法が求められている。近年、様々な分子標的薬が多くのがんで治療成績を向上させ、EGFR活性を阻害する薬剤はEGFR遺伝子に変異をもつ肺がんの生存期間を延長させた。多くの膠芽腫でもEGFRは活性化しているが、脳には血液脳関門というバリア機構のため多くの薬剤が通過できず、既存の分子標的薬では効果が十分でない。本研究からLSD1がEGFRシグナルの下流で膠芽腫の生存に関わる脂質代謝を調節しており、LSD1はEGFRシグナルが活性化した膠芽腫の治療標的となり得ることが示唆された。
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