研究課題
若手研究
モノカルボン酸トランスポーター1(monocarboxylate transporter 1: MCT1)は、モノカルボン酸(乳酸、ピルビン酸、ケトン体等)を細胞内外に輸送する担体である。申請者は間葉系幹細胞から骨芽細胞および脂肪細胞への分化をMCT1が制御する「トランスポーターによる細胞分化制御」というMCT1の新しい機能を見出したため、骨および骨髄脂肪組織におけるMCT1の機能を解析することが目的である。老人性および閉経後骨粗鬆症は、骨量の減少だけでなく骨髄脂肪組織の増加を伴う骨代謝疾患であり、本研究の成果は、これらの骨粗鬆症の治療法の開発に大きく寄与する可能性がある。
老化や肥満では、多分化能を持つ間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化より脂肪細胞への分化が優位になり骨の脆弱化の原因のひとつとなることが知られている。脂肪組織はミトコンドリアの機能低下により乳酸産生が高まることが特徴で、モノカルボン酸トランスポーター(MCT)と関連が深いと考えられた。本研究では、MCTが骨芽細胞および脂肪細胞への分化にどのような影響を及ぼすか、検討を行った。細胞にMct1 siRNAを導入して、遺伝子ノックダウンを行い脂肪細胞分化の促進および骨芽細胞分化の抑制を確認した。MCT1の脂肪細胞分化時の機能をメタボローム解析により網羅的に代謝産物の変化を検討した。
本研究は骨および骨髄脂肪組織におけるMCT1の機能を解析することである。MCT1の機能は、癌細胞、神経および筋肉などの糖代謝が盛んな組織で広く研究されているが、骨組織および脂肪組織におけるMCT1の役割に着目した研究はほとんど報告されておらず、本研究は極めて独創的であると考えられる。また、MCT1は分化の振り分けを介して、骨組織および骨髄脂肪組織の形成に関与する可能性が高いことから骨粗鬆症の新たな治療標的分子となる可能性があり、臨床的にも重要な意義を持つと考えられる。
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