研究課題
若手研究
口腔癌は世界的にみても主要な悪性腫瘍の1つでありその80%以上を口腔扁平上皮癌が占めている。しかしながら近年の診断・治療法の進歩にも関わらず、 数十年の間、5年生存率に大きな改善はみられていない。近年、transfer RNA(tRNA)修飾が種々の疾患において治療標的として注目されつつあるが、口腔癌との関連を調べた報告は少ない。そこで今回の実験では口腔扁平上皮癌の臨床検体および細胞株を用いてミトコンドリアtRNAのms2修飾の臨床的意義を解明することを目的とする。
本研究では口腔扁平上皮癌(OSCC)においてミトコンドリアtRNA(mt-tRNA)のチオメチル化修飾(ms2修飾)が与える影響を解明することを目的とし た。OSCC患者の臨床検体を用いた解析により、腫瘍部において周囲正常組織と比較して有意にms2修飾が増加していることがわかった。またOSCC細胞株SASにおいてms2修飾酵素であるCDK5RAP1の発現を抑制したところ、腫瘍増殖能の低下を認めた。さらに抗癌剤耐性細胞株において親株と比較して有意にms2修飾が増加していることがわかった。以上より、mt-tRNAのms2修飾はOSCCの悪性度、特に抗癌剤耐性に関与している可能性が示唆された。
口腔癌は世界的にみても主要な悪性腫瘍の1つでありその80%以上をOSCC が占めている。近年の診断・治療法の 進歩にも関わらず、5年生存率に大きな改善はみられていない。その原因として、高転移能、治療抵抗性など腫 瘍制御の障壁となる悪性形質をもつ腫瘍細胞が存在していることが挙げられる。tRNA修飾は、迅速かつ正確なタ ンパク質翻訳に寄与していることが示唆されており、近年様々な疾患との関連性が示唆されている。しかしなが ら、tRNA修飾とOSCCの発生・進展との関わりについては未解明なままであり、新たな知見を得ることは現在まで 大きな改善を認めていない治療成績の向上に寄与することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
International journal of molecular sciences
巻: 20 号: 10 ページ: 2473-2473
10.3390/ijms20102473