研究課題
若手研究
唾液腺癌の術前組織診断や転移の検出、予後予測、治療抵抗性に対し新たなバイオマーカーが必要である。本研究は唾液腺癌のFFPE組織をマイクロダイセクションしてマイクロアレイを行い、miRNAを網羅的に解析し、既知の治療標的分子に加え、免疫系遺伝子、増殖・浸潤関連遺伝子、上皮間葉転換関連遺伝子、各種トランスポーターの発現動態を解析する。唾液腺癌の分子生物学的特徴を明らかにして、臨床的な予後や病理組織学的所見との関連を探り、バイオマーカーを抽出することで、新規治療標的分子の開発、血液や唾液中のmiRNA定量、同定などで腫瘍の組織診断や転移の有無などの診断の一助となるマーカー開発に寄与したいと考える。
多形腺腫の組織多彩性を検証する目的で多形腺腫の病理組織診断がなされた104例を対象とし、Seifert分類に準じて病理組織学的解析を行った。腫瘍の上皮成分において、大唾液腺と小唾液腺症例との間で有意な差は認められなかった。間質様成分ではSeifert分類の各タイプにおいて大唾液腺症例と小唾液腺症例との間に有意差が認められた。粘液軟骨様構造 (subtype 2c) の発生率は小唾液腺症例 (7.9%) よりも大唾液腺症例 (35.7%)の方が高値であったのに対し、硝子化/線維化構造の比率は大唾液腺症例 (50.0%)よりも小唾液腺症例 (59.2%) でやや高値であった。これらの組織学的相違は、発生母組織自体の組織構築の違いが大唾液腺と小唾液腺症例間の差異に関連している可能性が考えられた。前述の結果にて有意差を認めた間質様成分に注目し、口蓋腺症例を対象とした免疫組織化学的検索を行った。SOX10陽性細胞率はcellular type (84.7%) が最も高値を示し、次いでclassic type (58.3%)、stroma-rich type (45.5%) の順であった。それぞれ3つのsubtype間で有意差 (p<0.001) を認めたことから、Seifert分類は被膜近傍の腫瘍性筋上皮細胞の出現比率と深く関係している可能性が示された。EGFRは主として導管上皮様細胞の細胞膜で陽性所見が認められた。EGFRのimmunoreactivescoreでは,cellular-rich type (スコア3) で最も高値を示し、次いでclassic type (スコア1-2)、stroma-rich type (スコア0-1) であったことからcellular-rich typeは他のtypeと比較し腫瘍細胞の増殖・分化といった生物学的活性が高い可能性が示唆された。
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