研究課題
若手研究
本研究は、原発性萌出不全(PFE)特異的な人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて、本疾患の発症メカニズムを解明することを目的とする。PFEは、側方歯開咬を特徴とする成長障害で、これまでに本疾患患者でPTH1R遺伝子にヘテロ接合型の変異が報告されている。申請者は、4名のPFE患者のPTH1R遺伝子でそれぞれ同定されているミスセンス変異がPTH1Rの機能を低下させることを見出した。本研究では、PFEの病態を明らかにするため、PFE特異的iPS細胞から得られる骨構成細胞について、増殖・分化ならびにPTH応答を含めた機能を解析し、PFEの発症メカニズムを解明する。
副甲状腺ホルモン(PTH)-1受容体(PTH1R)遺伝子の変異が原発性萌出不全(PFE)で認められるが、PFEの発症機序は不明だった。そこで、PFE患者と非患者の末梢血単核球からiPS細胞(PFE-iPSCとC-iPSC)を樹立し、PFE発症機序を解析した。それぞれのiPSCから骨芽細胞様細胞を誘導した。両骨芽細胞用細胞の石灰化能、骨芽細胞マーカー遺伝子の発現に差は認められなかった。活性型ビタミンDによるRANKLの発現誘導にも差は認められなかった。しかし、PTH刺激によるRANKL発現誘導は、C-iPSC由来骨芽細胞様細胞に比べ、PFE-iPSC由来骨芽細胞様細胞で著しく低下していた。
PFE患者のPTH1R遺伝子に変異が報告されていたが、その変異のPFE発症への関与を説明する研究はなかった。今回、PFE患者iPSCを用いることで、PFE患者のPTH1R遺伝子変異がPFE発症に関与するメカニズムのひとつを明らかにした。すなわち、PFE患者由来iPSCと健常人iPSCから誘導した骨芽細胞様細胞で石灰化や分化マーカーの発現に差はなかったが、PTH応答は前者で低下していた。歯の萌出には破骨細胞分化を誘導するRANKLの発現が必要だが、PTH誘導性のRANKL発現が前者で低下していた。PFE患者では、PTH依存性破骨細胞誘導能が低下し、歯の萌出が阻害されている可能性を示唆する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (4件)
Journal of Dental Research
巻: 99 号: 4 ページ: 429-436
10.1177/0022034520901731
昭和学士会雑誌
巻: 79 号: 4 ページ: 529-535
10.14930/jshowaunivsoc.79.529
130007768979
http://www10.showa-u.ac.jp/~oralbio/
http://www.ortho-showa.com