研究課題
若手研究
慢性創傷のほぼ100%は感染を有しており、治癒が難治化する。感染創のケアとして、洗浄、デブリードマンなどが選択されるが、宿主免疫機能の低下により、感染が再発し治癒が進行しない。その解決策として、リンパ球を活性化し、創傷ケアと同時に宿主免疫を活性化することで、効率的に慢性創傷を治癒に導けると考えた。本研究では、リンパ球を活性化するα-GalCerを感染創マウスモデル(創+細菌感染)および、重症感染創モデル(創+細菌感染+糖尿病)マウスモデルに投与し、リンパ球の活性化が慢性創傷の細菌感染 (バイオフィルム形成)、治癒速度に与える影響を解明することより、宿主免疫を増強する新規ケア技術の確立を目指す。
褥瘡や糖尿性下腿潰瘍のような慢性創傷の90%以上から細菌が検出され、中でも緑膿菌はしばしば検出される細菌である。本研究では、リンパ球の一種であるNKT細胞活性化が創部緑膿菌感染排除に与える影響について解析を行った。α-GalCer によるNKT細胞活性化により、創部緑膿菌数は、緑膿菌接種後 5、7 日目で有意に低下し、3 日目の好中球数が有意に増加した。緑膿菌接種後 5 日目にIFN-γ、IL-22、IL-23、IL-12p70、S100A9 産生量が有意に増加した。NKT 細胞活性化は、炎症性サイトカイン、抗菌ペプチド産生,好中球集積の誘導により、創部緑膿菌排除を促進する可能性がある。
現在、細菌感染・バイオフィルム形成が疑われる慢性創傷のケアとして、洗浄、銀イオン含有ドレッシング材などが選択され、これらは創部の細菌数を減らすことに主眼を置いている。本研究は、宿主免疫を標的とした新しい創傷ケア技術の確立を目指すものである。本研究により、宿主免疫活性化が創部細菌数を減らすことが明らかとなり、新しい創傷ケア技術となる可能性を示した。この宿主免疫を標的としたケア技術は、救済できる慢性創傷を増やす可能性がある。
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