研究課題
若手研究
本研究では、顔が関わる視聴覚統合であるマガーク効果を用いて、観察者側の認知様式の多様性とその背景となる神経基盤を検討する。マガーク効果では、欧米や東アジアといった文化の違いにかかわらず、話者の口元への注視がマガーク効果の強さ(視覚モダリティの重み付け)を説明することが、近年の行動実験により明らかとなっている。他方、fMRI研究では左上側頭溝(STS)の働きがマガーク効果の神経基盤として知られている。そこで本研究では行動実験(眼球運動計測など)と脳機能計測から、マガーク効果の多様性(個人差)の背景として想定される、口元への注視率と左STSの働きとの関連を明らかにすることを試みる。
本研究では、顔が関わる視聴覚統合であるマガーク効果を用いて、自閉症傾向との関連から、観察者側の認知様式の多様性とその背景となる神経基盤を検討した。本研究の一連の検討により、自閉症傾向に関連するマガーク効果の個人差は錯覚の生起に関与する脳領域(左上側頭溝など)の活動量の違いがあること、視覚的な顔処理ではなく統合過程に起因すること、また、その個人差は統合における各感覚情報の重み付けのばらつきにより生じるが、状況限定的である可能性が示唆された。これにより、顔が関わる視聴覚統合の多様性のメカニズムの一端を明らかにできたと考える。
マガーク効果の研究は、1976年にMcGurk & MacDonaldによる報告から40年以上経つ現在も、年間100報以上の論文が出されており、認知科学、心理学、音声工学、脳科学、精神病理学など様々な領域から注目を集めるテーマである。ヒトの音声知覚の特性を反映する錯覚のため、その生起メカニズムの解明はヒトがどのように顔と音声を統合するのか、そのメカニズムの理解に寄与できる。さらに、本研究は、自閉スペクトラムとの関連からマガーク効果の個人差を解明しようという試みであり、その成果により、知覚的側面から、自閉スペクトラムを持つ人の対人コミュニケーション困難性の理解に貢献できる可能性があるといえる。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 9件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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