研究課題
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糖尿病性心筋症は糖尿病性心不全の前段階と考えられ、心筋肥大と拡張機能不全を特徴とするが、詳細な発症メカニズムは明らかでない。糖尿病では腸管の脂質吸収が亢進していると考えられており、また糖尿病患者では血中の酸化ステロール濃度が増加していることが報告されている。糖尿病性心筋症の増悪因子として酸化ステロールが関与している可能性について、動物モデルを用いて検討し、病態進展における酸化ステロール蓄積の役割を明らかにする。
糖尿病性心筋症進展のメカニズムとして、微量の食餌由来酸化ステロールが長期間吸収されることで、心筋組織に及ぼす影響を検討することが本研究の目的である。酸化ステロール添加食・非添加食を作成し、ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットに16週間食餌させたところ、酸化ステロール添加食群では超高磁場心臓MRIにて左室ストレイン値低値を認め、局所心筋機能障害が示唆された。更に心臓での炎症性サイトカインのmRNA発現は亢進しており、心筋組織への炎症細胞の浸潤を認めた。今後、酸化ステロールの心筋組織への局在評価を行い、免疫系細胞やミトコンドリア機能に着目したメカニズム解明を継続する予定である。
本邦において糖尿病患者数は増加の一途を辿っている。糖尿病の合併により心不全発症リスクは高まるが、その前段階として心筋肥大や拡張機能不全を特徴とする糖尿病性心筋症がある。しかしこれまで、糖尿病性心筋症において何が増悪因子なのか、どの病態を改善すれば進展を阻止できるのか、詳細な分子メカニズムは明らかでない。糖尿病では腸管の脂質吸収が亢進しており、食事由来成分である酸化ステロールが糖尿病性心筋症を進展させる可能性を着想し、動物モデルを用いて再現した。酸化ステロールの新たなエビデンスが集積されることで、酸化ステロールに対する介入という新規治療法の開発につながる可能性がある。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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