研究課題/領域番号 |
19K21812
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
唐沢 穣 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90261031)
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研究分担者 |
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10344532)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
鶴田 早織 (塚本早織) 愛知学院大学, 心理学部, 講師 (80794073)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 道徳判断 / 勤労意識 / イデオロギー / 公正観 / 文化 / 道徳観 / 道徳動機 / 社会規範 / 規範 / 道徳意識 / 制御焦点 / 原因帰属 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の道徳心理学研究研究によって明らかになった「道徳基盤」に加えて、「勤勉」もまた道徳判断の重要な根拠となる可能性と、それが日本社会において顕著である可能性を検証するため、社会心理学的・文化心理学的方法を用いた実証的研究を行う。特に、勤勉に関わる倫理的価値意識の基礎をなす、認知過程と動機過程、そして文化的特質の解明に焦点を当てる。 併せて、これらの心理的諸過程の相互関係を理解するための理論的枠組みの構築を目指す。 さらに、本研究の知見をもとに、勤労をめぐる現実的な社会問題の解決策に関する論考を行う。以上を達成するために、応用倫理学の観点と心理学研究の方法を総合した学際的な試みを行う。
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研究実績の概要 |
- 日本の社会において勤勉であることが道徳的価値意識に基づいている可能性を検証するために、道徳規範に対する違反行為に対する人々の反応を分析した。具体的には、予備調査により勤勉道徳違反であるとされた複数のシナリオについて、なぜ道徳違反であるかの説明過程を調べた。説明のための選択肢として「義務論的」「功利主義的」「感情的」の各説明を用意して比較したところ、勤勉違反については帰結主義的な説明が好んで用いられる可能性が示された。しかもその傾向は、道徳基盤理論が提唱する5つの基盤違反のいずれに関する違反よりも顕著であった。また、調整変数として公正世界信念、道徳動機、道徳基盤判断に関する個人差変数の役割について検証した。これらの結果は、道徳的判断が他者への説明という過程を経たコミュニケーションとして伝搬していく可能性について重要な示唆を与えるものである。 - 勤勉道徳に関わるもう一つの過程として、不当な扱いを受けた従業員に対する、微細な被害者非難の傾向を検証するための、シナリオ実験を行なった。結果は、被害者非難よりもむしろ、不当な扱いによる逆境を克服したという解釈から好意的な評価や判断が引き出される過程が明らかになった。さらにこのデータからは、勤労場面における公正信念やイデオロギー的な信念に関する個人差変数の分析を続けていくための基礎資料が得られた。職場における不当ないじめ・排斥などの処遇をめぐる他者からの認知そして自己認知が勤労意欲に与える影響について分析するための基礎資料も得られた。 - 勤勉道徳の文化的背景を吟味するため、アメリカ・ゴンザガ大学の研究者との国際共同研究実施に向けた取り組みを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の重要課題であった、日米共同研究は、新型コロナウィルスの感染状況が続いたことと、共同の相手先であるゴンザガ大学側の予期しなかった障害により、進捗に遅れが生じた。そのため、実証研究結果の分析についても遅れが生じており、学会発表や論文における成果の公表が遅滞した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスを理由とする研究の継続が認められたこと、および海外渡航の制限が解除されたことを受けて、本年度は国際比較研究の推進を第一の目標として掲げる。また、勤勉道徳意識を他の領域の道徳意識(具体的には道徳基盤)と比較対照する作業をさらに精緻化させる。加えて、本年度はこれまでに蓄積された研究成果の公表にも重点を置く。
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