研究課題
挑戦的研究(萌芽)
「カルシウムシグナリングはなぜ多様性を発揮できるのか」の解明を目標とする。情報シグナリングはCa、cAMP、情報脂質が仲介し、時空間特異的に情報を伝える。とくにCa は主役である。植物では光・ホルモン・病理・重力屈性等、Ca介在反応は多様である。申請者らが見出した細胞膜結合型Ca結合タンパク質PCaPを研究対象とする。PCaPのN端領域はCaM/Caとホスファチジルイノシトールリン酸 (PIP) に拮抗的に結合し、CaM/Caが形成されると、PIPはPCaP1から遊離する。PCaPがCaシグナルを脂質シグナルに変換するハブ機能を果たしている可能性がある。この点を解明する。
生命科学の難問である「カルシウムシグナリングはなぜ多様性を発揮できるのか?」を解くことを目標としている。細胞情報シグナリングは、カルシウム、cAMP、イノシトールリン脂質が主役となり、状況に応じて時空間特異的に情報を的確に伝える。中でもCaは二次メッセンジャーとして重要である。細胞質Caは極めて低い濃度に精密に維持され、Ca濃度の一過的な上昇により、例えばカルモジュリンがCaと複合体を形成してキナーゼを活性化し、標的タンパク質の機能を調節する。植物では、光・ホルモン・病理・機械刺激応答、重力屈性等、Caが介在する反応は多様である。では、なぜCaの濃度変化は多様な応答を引き起こすことができるのだろうか? この問に関連する分子として細胞膜結合型Ca結合タンパク質PCaPを見出した。このPCaPは、CaM/Caとホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)に拮抗的に結合し、CaM/Caが形成されると、PCaPは結合していたPIPを遊離する。PCaPが、Caシグナルを脂質シグナルに変換するハブ機能を果たしている可能性が高い。カルシウムシグナリングの多様性の分子機構解明につながると期待しつつ、下記の実験を進めた。(1)シロイヌナズナのPCaP1遺伝子欠失株では根の水分屈性が低下することを見出し、根の特定の細胞でのPCaPの細胞内局在性が顕著に変化すること、そして水分屈性に関わるMIZ1遺伝子との関連等の知見をまとめて論文発表した。(2)PCaPと相互作用する情報脂質分子を可視化するための蛍光プローブ導入株の作出を進めている。(3)シロイヌナズナに加えて、コケ植物にもPCaP類縁分子が存在することを遺伝子レベルで見出した。その遺伝子欠失株では、植物体の形態的変化(表現型)が著しく、新たな研究対象植物に加えた。この分子の挙動を明らかにし、相互作用分子を解明するために特異抗体を調製した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた3課題、すなわち(1)PCaPと相互作用するタンパク質分子の同定、(2)PCaP分子と相互作用する脂質シグナル分子の可視化と解析、(3)PCaPの水分屈性への寄与の解明、について、それぞれ当初の予定通り進めることができた。また、PCaPに対する抗体は極めて特異性が高く、今後の研究に活用できるものであった。
研究課題としている3課題について、下記のように進めていきたい。(1)PCaPと相互作用するタンパク質分子の同定: 植物組織から細胞膜を含む膜画分と可溶性画分を調製し、免疫共沈法、酵母ツーハイブリット法、免疫ブロット法等を駆使して、候補分子を探索し、分子の特定につなげる。特定できた場合は、分子同士の結合特性を明らかにする。(2)PCaP分子と相互作用する脂質シグナル分子の可視化と解析: 現在進めているPCaP欠失株と脂質シグナル分子(PIP)可視化株の掛合せ株から、ホモラインを選抜して、野生株とPCaP欠失株とで、脂質シグナル分子の挙動の差異を比較検討し、PCaPの作動機構の解明の主要な知見とする。(3)PCaPの水分屈性への寄与の解明: 上記の変異株も用いて、水分屈性に対するPCaPの寄与について、さらに多くの知見を蓄積し、再度、水分屈性を専門とする研究者との共同研究を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)
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